楽天など新興通信業者、切り札は安価なクラウドPhoto:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

 学生の学期末レポートから企業の人事情報に至るまで、近頃はありとあらゆるものがクラウド上に存在する。データをまとめて保管・処理する巨大なサーバー群であるクラウドは、アマゾン・ドット・コムのような企業が運営している。

 モバイル通信ネットワークも次第にクラウド依存を強めている。

 米衛星放送大手ディッシュ・ネットワークや日本の楽天グループのような移動体通信事業の新規参入組が構築する無線ネットワークには、特にそれが当てはまる。競合する既存大手企業よりもコスト面で優位に立つ必要があるためだ。

 スマートデバイスで動画をダウンロードしたり、友人にメッセージを送ったり、今まで通りに電話をかけたりする場合、人々はその背後でデータを処理する機械にまで思いをはせることはない。だが、フィンランドのノキアやスウェーデンのエリクソン、中国の華為技術(ファーウェイ)などが製造するカスタマイズされたネットワーク機器の設置や管理にはコストがかかる。だからこそ、携帯電話の無制限データプランの請求が時に70ドル(約7900円)を超えることもあるのだ。

 これに対し、いわゆる仮想化されたネットワークの目的は、上記のカスタマイズされた機器が果たす機能の多くをソフトウエアプログラムに組み込み、それを既製品のサーバー上で動作させることにある。無線信号の処理などの作業をクラウド上で行えるため、通信事業者は設備投資や運用コストを減らすことができる。