シェアリング・エコノミーを積極的に取り入れることが、世界に通用する観光地となる必須条件、という星野リゾート代表の星野佳路さん。前回紹介したAirbnbをはじめとする民泊につづいて、今回はUber(ウーバー)をはじめとするライドシェアが観光業にとどまらず地方をいかに活性化するか、について議論する。

なぜUber合法化を進めるべきか

 前回は民泊を事例に、シェアリング・エコノミーが観光業に与えるインパクトについてお伝えしました。今回は、もう一つのパワフルなシェアリング・エコノミーであるライドシェアにフォーカスしてみましょう。

 その代表格が「Uber(ウーバー)」です。最近日本ではUberEats(ウーバーイーツ)の方が有名で、食事の出前サービスと思われているかもしれませんが、もともとはライドシェアを世界に展開した企業です。

 海外ではLyftをはじめ多くの競合サービスが誕生しており、ライドシェアも民泊と同様に観光産業を大きく変革しつつあります。米国で学生をしていた1980年代から近年まで私にとってサンフランシスコは大好きな街、ロサンジェルスは大嫌いな街でした。ロサンジェルスの方が魅力コンテンツは多いのですが、公共交通機関が少なく、レンタカーすると渋滞と駐車場探しに大変で、旅行者に親切な街ではなかったからです。ところが、Uberの誕生は私のロサンジェルスに対するイメージを180度変えてしまいました。滞在中は運転手付き専用車をチャーターしているような便利さがあるのです。

星野リゾート代表が語る、地方こそUberなどライドシェアを合法化すべき理由星野佳路(ほしの・よしはる)さん
星野リゾート代表
1960年長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程を修了。帰国後、91年に先代の跡を継いで星野温泉旅館(現星野リゾート)代表に就任。以後、経営破綻したリゾートホテルや温泉旅館の再生に取り組みつつ、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」などの施設を運営する“リゾートの革命児”。2003年には国土交通省の観光カリスマに選出された。

 利用者は専用のアプリをダウンロードし、クレジットカードなど必要な情報を登録しておくと、目的地の住所や名前を入力するだけで、近くを走っているドライバーとマッチングしてくれて今いる場所に迎えに来てくれます。精算はキャッシュレスで目的地に着いたら降りるだけ。事前に距離と最短コースが表示され、大体の料金まで把握できるので、地域に詳しくない旅行者でも安心して利用できます。一方、ドライバーは一般の人でも自分の名前や写真、車種などを申請して承認されれば、隙間時間を利用して稼ぐことができます。だから一般のタクシーよりも安くすることができるのです。

 ライドシェアは、海外の多くの国や地域で、観光に限らず日常的な移動サービスとして定着しつつあり、これなしの生活は考えられないような地域もいまやあるのです。ところが日本では、Uberのようなサービスは違法な「白タク」(※編集部注:タクシー事業の許可を受けた緑ナンバーでなく、白ナンバーをつけている自家用車をタクシーとして使うことは、日本では道路運送法で禁じられている)とみなされ導入できていません。Uberは日本国内では既存のタクシー事業者と連携してサービス提供を始めていますが、それは本質的にはシェアリング・エコノミーとしてのライドシェアではなく、その経済的効果も限定的です。

 私は、こうしたライドシェアの合法化を進めるべきだと主張しています。ただ、その理由はタクシーが多い都市部で価格競争を起こしてほしいということではありません。都会に比べて公共交通機関が充実しておらず移動手段が少ない地方の「足」問題の解消につながるからです。