職場や家庭、SNSなどで、その場の感情に任せて相手に怒りをぶつけてしまい、後悔したことはありませんか。発端はささいなことだったのに、ぶつけてしまった怒りが人間関係を傷つけ、その後、取り返しのつかない大事に発展することも少なくありません。
そんな失敗をしないために必要な、怒りをうまくコントロールして日々を平和に穏やかに過ごすコツを教えてくれるのは、精神科医の伊藤拓先生です。
20年以上にわたり、のべ5万人を診てきた先生の著書『精神科医が教える 後悔しない怒り方』から再構成して紹介します。

【精神科医が教える】SNSでケンカを売られても、心を乱されずに平常心でいられるコツPhoto: Adobe Stock
伊藤拓(いとう・たく)
精神科医
昭和39年、東京都西東京市出身。東京大学理科Ⅱ類(薬学部)卒業後に医師を目指し、横浜市立大学医学部医学科に再入学。卒業後に内科研修を1年履修した後、精神科に興味を抱き、東京都立松沢病院で2年間研修する。平成5年に医師免許、平成10年に精神保健指定免許を取得。現在、大内病院精神神経科医師。
精神科医としてこれまでの27年間でのべ5万人以上を診ている。統合失調症、気分障害(躁うつ)、軽症うつ病の分野で高い評価を得ている。

SNSでは感情のテンションに注意!

最近はツイッター、ライン、フェイスブック、インスタグラムなどを利用する人が増え、そこにアップされる他人の反応を気にする人がたいへん多くなってきました。

相手からなかなか返信がこないことでイライラしたり、自分が発信したことに対する閲覧数や「いいね」の数が気になって仕方なかったり、さらに、自分の発信に対して他人が反応して書き込んできた言葉によろこんだり、頭にきたり、悲しんだり、傷ついたり……。みなさんの中にもこうした経験をしたことのある人が多いのではないでしょうか。

私はこのようにSNSの他人の反応をあまりに気にしすぎるのは考えものだと思います。しょせん、他人の言動は自分の思い通りにはならないもの。先にも述べたように、「自分ではコントロールできないもの」です。そういう「コントロールできないもの」の反応に、いちいち一喜一憂して心を乱されていたら、そのうち振り回されっぱなしで疲れ果ててしまいます。

ですから、のめり込みすぎないように意識したほうがいいのです。

のめり込みすぎるのを防ぐため、私は、SNS利用の際、感情のテンションを2段階低くすることをおすすめします。「最高にうれしい」「めちゃくちゃ頭にきた」「どん底まで悲しい」と感じるのが「5」のレベルだとすれば、あらかじめ「3」のレベルにまでテンションを落として接するようにするのです。そうすれば、自分の感情が熱くなるのを防げます。

「3」レベルであれば、他人の反応がよくなくても「まあ、そんなものか」くらいに受け止められるはず。他人の反応に対する「期待度」が下がるので、相手が自分を評価してくれなかったようなときもあまり悲しまずに済むのではないでしょうか。

また、あらかじめ感情のテンションを下げておくと、相手が自分を挑発してきたり、ケンカを売ってきたりしたようなときも、そうカッカせずに済みます。

たとえば、相手が「こんなクソつまらないことを書いてよく恥ずかしくないな」などと言って挑発してきたときも、「いいアドバイスをありがとう、では、さようなら」といった具合にまともに取り合わず、ヒートアップを回避できるのではないでしょうか。

とにかく、SNSでは何かと喜怒哀楽の振れ幅が大きくなりがちだからこそ、意識して「醒めた感情モード」で接するように心がけるべき。

冷静さを失わないように、“ちょっと体温低め”で気楽に言葉をやりとりするくらいがちょうどいいのです。