三井住友 名門「財閥」の野望#12

インドネシアの大型火力発電所の土木建築工事で約1500億円の損失を計上し、窮地に陥った三井E&Sホールディングス(HD。旧三井造船)。壮絶な構造改革を経て赤字体質からは抜け出したが、財務基盤は脆弱なままだ。銀行や保険、建設業界で一足先に進んだ「三井・住友」の融合に倣った重工業界の再編――すなわち、住友重機械工業との統合はあり得ないのか。特集『三井住友 名門「財閥」の野望』(全18回)の#12では、三井E&SHDの死闘を振り返りながら、重工業界における三井・住友企業の統合可能性を探る。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「艦艇事業を三菱重工に譲渡」の衝撃
“祖業解体”も辞さぬ三井E&Sの覚悟

「新聞の株式欄を見ても三井E&Sホールディングス(HD)の社名が見つからない!どうしたんだ、何かあったのか!」

 10月、三井E&SHDのある一般株主は、心配のあまり思わず同社にそう電話した。いつも通り「輸送用機器」の箇所を見ているのに、その所属企業の一覧から三井E&SHDの社名がこつぜんと消えていたからだ。

 種明かしをすれば、何ということはない。10月1日、三井E&SHDの東京証券取引所における所属業種は、輸送用機器から「機械」に変更になったのだ。

 三井E&SHDは同日、傘下で造船事業を展開する三井E&S造船の艦艇事業を三菱重工業に譲渡。また、今後は商船の設計のみを行うことになる三井E&S造船についても、株式の49%をオーナー系の造船専業会社である常石造船に譲渡した。

 それらに伴い、グループの中核事業が舶用エンジンやコンテナクレーンを手掛ける機械事業にシフトしたため、所属業種も機械に変わった。つまり、輸送用機器から機械の欄に少し視線をずらせば社名は無事に見つかったはずである。

 とはいえ、三井E&SHDといえば、財閥解体前の旧三井物産造船部として創業した、造船事業を祖業とする三井グループの名門だ。その名門が“祖業解体”に動かなければならないほど、日本の造船業は苦しく、また三井E&SHDの経営にも余裕がなかったということだ。

 三井E&SHDの自己資本比率は2021年3月末で8.8%と、危機的水準にある。財務体質の強化は急務だが、銀行や保険、建設業界で一足先に進んだ「三井・住友」の融合に倣った重工業界の再編――すなわち、住友重機械工業との統合はあり得ないのか。

 その問いに対する下村真司・住友重機社長 CEOの回答を明かす前に、三井E&SHDが直面した苦難と、これまでの死闘を振り返ろう。