早期離職の防止にもなる、「経験学習」での新人教育のノウハウPhoto by K.SUGASAWA

「経験学習」による人材育成方法において、総合物流企業・センコー株式会社を核とするセンコーグループホールディングス株式会社(本社・東京都江東区)の取り組みは他社の大きな指針になるだろう。経験学習の肝となる「内省」は従業員にどのような気づきを与えるのか。また、経験学習のサイクルをまわす「経験学習ノート」の仕組み、新人教育でのOJTリーダーの役割、1on1ミーティングのサーベイとそのフィードバックとは? 同社人材教育部・秋山政泰部長に話を聞いた。(聞き手/永田正樹、構成・文/棚澤明子、撮影/菅沢健治)

なぜ、“ホールディングス”が教育部門を持つのか?

永田 2016年に創業100周年を迎え、翌2017年に「センコーグループホールディングス」と社名変更された御社は、まさに次の100年に向かって歩み始めたところですね。ミッション&ビジョンとして「人を育て、人々の生活を支援する企業グループ」と、人を育てることへの思いを掲げていらっしゃることからも、人材育成に重きを置いていることが伝わってきます。

秋山 一般的に企業グループの場合、教育部門は各グループ会社のなかにあるもので、当社のようにホールディングスが教育部門を有するのは珍しいようです。「人を育てる」というミッション&ビジョンを実現させるために、すべてのグループ会社を対象にしてしっかりとした人材教育を実施していこう、という経営層の思いの表れです。実際、新体制になった2017年から、それまでの物流事業グループに加え、商事事業グループを中心に我々センコーグループホールディングスがグループ会社の新人教育を1年かけて手がけるプログラムもスタートしています。

永田 センコー株式会社では、人事部が新卒採用と入社3年目までの物流事業グループ会社の新人教育の両方を担っていたとうかがいました。現在は、150社以上あるそれ以外のすべてのグループ会社の新人教育を御社が担当されているのですか?

秋山 いえ、現段階で我々が担当しているのは、新卒社員を10人未満しか採用していない小規模なグループ会社のみです。現在のスタイルの教育は、まず、2017年に私自身の部門で入社2年目社員に対してトライアルで実施し、効果を確認できたことで、2018年には、主に商事事業グループ会社を中心に5社18名、2019年は5社9名、2020年は5社12名、今年は5社20名を対象に実施しました。この5社の内訳は毎年異なります。

永田 小規模なグループ会社の新人教育をホールディングスが支援していく意義については、どのようにお考えですか?

秋山 経営理念を広く行きわたらせるのはもちろんのこと、グループ会社同士が横の繋がりをつくる場になってほしい、という意図もあります。というのも、これだけ多くのグループ会社があると、お互いにどのような仕事をしているのかがわからないことも多々あります。昨年2020年は、新入社員から「ほかのグループ会社が何をしているのかを知りたい」という要望があったので、研修のなかで各社の人事部に自社の事業について紹介してもらう時間を設けました。お互いに理解し合って仲間意識を持つことができたら、その連携がいずれビジネスに発展する可能性もあると思います。

永田 御社の新人教育の特徴として、直接に新入社員とやりとりをせず、参加している各グループ会社の人事部とやりとりをしているのですね?

秋山 はい。あくまでも「各グループ会社の人事部が、我々を活用して自分たちで新入社員を育成している」という形をつくっています。ですから、毎年最初に各社の人事担当者を集めて(研修の)企画主旨を伝えるところからスタートしますし、教育期間中に新入社員に何らかの問題が起こったときも、本人に伝えるのではなく、人事部に連絡するようにしています。社員が仕事を続けていくなかで何かうまくいかないことがあった場合、相談に行くのは自社の人事部ですよね。関係性が構築できていないと相談もしづらいでしょうし、人事部も当人のことを理解できていない可能性があります。新人教育という入り口のところから人事部に新入社員の様子を把握していただくことが、後々のことを考えると得策です。

早期離職の防止にもなる、「経験学習」での新人教育のノウハウ

センコーグループホールディングス株式会社

管理本部 人材教育部長 秋山政泰 Masayasu Akiyama

1989年にセンコー株式会社入社。関東地区での支店スタッフ・営業所長を経験し、2006年よりセンコー株式会社のHR部門、2017年よりセンコーグループホールディングス株式会社へ出向し、現職に至る。約150社の事業会社人事部門と連携し、企業理念「人を育てる企業グループ(成長職場)」実現を目指して、教育方針・しくみ・環境づくりを担当する。2021年、神戸大学MBA(経営学修士)修了。経営行動科学学会会員。アカデミックな知見を実務に取り入れた効果的な教育システムづくりに注力する。