写真はCOP26にビデオメッセージを寄せたエリザベス女王エリザベス2世のような国王、女王が、今後も登場しつづける保証はない(写真はCOP26にビデオメッセージを寄せたエリザベス女王) Photo:Handout/gettyimages

2020年、イギリスはEU(ヨーロッパ連合)を離脱し、世界中を驚かせました。理由として経済や法律の問題が取り上げられていましたが、ヨーロッパの歴史をひも解くと、実はイギリスと他の欧州諸国では中世の頃からまったく異なる文化や意識を持っていたのです。そこで今回は、歴史ライター・内藤博文さんの著書『「ヨーロッパ王室」から見た世界史』(青春出版社)から、ヨーロッパを形作ってきた王家の歴史について抜粋紹介します。

イギリスがEUを離脱したのは歴史的に必然だった

 イギリスが「ブレグジット」を実行し、EU(ヨーロッパ連合)を正式に離脱したことに対して、青天の霹靂のように語る人もいるが、ヨーロッパの長い歴史からすれば必然ともいえるだろう。

 ヨーロッパの中でも、イギリス、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの4カ国は歴史的に異質な国家なのである。いまヨーロッパには10の王家があり、イギリスをはじめとするこの4カ国は、すべて王家を戴いている。この一点だけでも異質なのだが、加えて、この4カ国の王家は、ヴァイキング(ノルマン人)を祖に持っている。彼らの国家をつくり、運営してきたのは、ヴァイキングとその末裔たちなのだ。

 これに対して、ドイツ、フランス、イタリアなどEUの主要加盟国は、まったく異なる王家の歴史を有する。彼らの国は、中世の「フランク王国」、さらには「古代ローマ帝国」の歴史の記憶とその継承によってつくられていった。ドイツやフランスは、ヴァイキングの王にはじまるイギリスやデンマークなどとはまったく異なる歴史文化や意識を有しているのだ。