みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#29では、メガバンク3行のなかで、みずほの凋落が顕著になっていたリーマンショック後の2009年を振り返る。財務基盤、収益力共に他行に劣後。みずほの不振は金融危機という一時的な影響にとどまらず、さらに深刻化する恐れがあった。

「週刊ダイヤモンド」2009年7月4日号の特集「銀行・証券・ノンバンク再編加速!勝者と敗者」を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

みずほが陥った異常事態
銀行が優先出資証券の配当を払えず

「みずほは大丈夫なのか」

 2009年5月、業界関係者に驚きが走った。

 みずほは08年12月に国内の機関投資家などに3550億円の優先出資証券を発行した。ところが、09年6月末に支払い予定の配当について、「みずほ銀行(BK)およびみずほコーポレート銀行(CB)の財務状況の関係で、(配当支払い予定日に)配当は支払われない見込みです」との知らせが投資家に送られたのだ。

 結論からいえば、配当は予定どおりに支払われる。BK、CBが支払うべき配当原資を、持ち株会社であるみずほFGが肩代わりするからだ。だが、「銀行が優先出資証券の配当を払えなくなるというのはきわめて稀なこと」(外資アナリスト)と問題視する。

 みずほは、この直前にも、市場関係者が首を傾げるような決断をしたばかりだった。

 4月末に最初の任意償還日を迎えた永久劣後債で、みずほはコール(任意償還)を見送った。劣後債の償還は任意ではあるものの、任意償還日に償還し、新たに劣後債を発行するのが慣行となっている。投資家はそれを前提に劣後債を購入するため、劣後債がコールされなければ持ち続けなければならない。

 これについて金融関係者のあいだでは、「市場調達コストが跳ね上がるなか、コールしないほうが金利を低く抑えられるからではないか」ともささやかれている。

 そうしたうわさに対し、みずほは「指摘の劣後債については、複数の海外金融機関もコールしていない」と反論する。いずれにせよ、同様の劣後債を発行したメガバンク3行のうち、みずほだけがコールを行なわなかったのは事実である。