みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#7では、「みずほホールディングス」が誕生するも、傘下に日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の旧3行がぶら下がっていた端境期にフォーカスする。「みずほ」の名の下に結集した旧3行だったが、統合作業の中で早くも主導権争いに明け暮れていた。

「週刊ダイヤモンド」2000年10月21日号特集「再生か沈没か 銀行の岐路」を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

興銀、一勧、富士の3行が
同グループ内で熾烈な融資競争

 みずほグループ(日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行)の海外貸出しがすさまじい勢いで積み上がっている。2000年3月末の残高は3行計で8兆3000億円、それがこの1年だけで1兆3000億円近く上乗せされ、10兆円の大台に近づく計画だ。

 ある日本企業が3行に融資を打診すれば、3行とも応じてしまう。のみならず、非常に利ザヤの低いローン債権を他の外国銀行から買ってきて、3行それぞれに積み上げる。ニューヨークもロンドンもクアラルンプール(マレーシア)も事情は同じで、世界中どこを見渡しても例外は見当たらない。

 現地の3行の支店は自ら望んで貸出し競争に突っ込んでいるわけではない。むしろ、統合を早めたほうがいいと考えている支店長連中も少なくない。

 ニューヨークはとりわけそうだ。世界最大の銀行の統合作業がどれだけスムースに早く進むか。邦銀の競争力復活を占うモデルケースとして、米連邦準備制度理事会(FRB)やニューヨーク連銀はみずほの動きを注視している。加えて、「格付けの低い3行がバラバラに貸出しするより、統合してみずほにしたほうがよほど商売もしやすい」(みずほ幹部)。

 にもかかわらず、3行による貸出し競争が止まらないのは、2002年3月までは持ち株会社の下に3行がぶら下がる状態が続くからだ。