38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの会計士・林總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』がダイヤモンド社から発売に。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えします。登場人物は、林教授と生徒の川村カノンの2人。知識ゼロから始めて、決算書を読み解くスキルを身につけていくのか? 川村カノンになったつもりで、本連載にお付き合いください。好評連載のバックナンバーこちらからどうぞ。

【会計の実践編】A社とB社では、どちらが儲かっているか?Photo: Adobe Stock

カノンは、決算書対決で父親に勝てるか?

 約束の時刻。カノンとその父、川村涼之助は私の事務所のドアをノックした。娘との対決だというのに、涼之助はワイン会と同様、なんの気負いも感じられなかった。

 一方、カノンは私の前では威勢のいいことを言っていたものの、この日は見るからに不安げだった。

川村 先生には娘を丁寧に教育していただきました。まずはお礼申しあげます。

林教授 私もいろいろと勉強になりました。それにしても、優秀なお嬢さんで鼻が高いでしょう。

川村 とんでもない。出来が悪くて。とはいえ、私の会社を継いでもらわなければなりませんからね。それで、先生に超特急で会計を教えていただきました。それで、今日は私から娘への経営指導でしたね。

カノン 今日はお父さんと会計を議論するのよ。

川村 何? そんなことは聞いていないぞ。

林教授 あれ、一昨日のワイン会でおっしゃったはずですよ。「オレは会計には自信がある。娘の前ではわからないフリをしているだけだ」と。それから「あいつはまだまだ若い。オレの跡を継ぐには50年はかかる」とも。

川村 そんなこと言いましたっけ? いや、飲みすぎたかなぁ。

林教授 私が「なら、お嬢さんと対決してみたら」と水を向けた時、「面白い、コテンパンにしてやる」と豪語していましたよ。それで、今日、お越しいただいたんです。

カノン やはりそうだったんだ。父が、私と議論するなんてあり得ませんもの。

川村 ちょっと待った。オレは年商100億円の経営者だぞ。会計だって、わからないワケではない。お前の前で素人を装っていただけだ。先生、娘をコテンパンにしてやりますよ。なんなりと、問題を出してください。

カノン 私は、雑用係は卒業しました。受けて立ちます。

林教授 面白くなってきた。では、始めるとしよう。