「イラン核開発問題」解決を難しくする米国の強硬姿勢、その理由は?Photo:PIXTA

世界は対立や紛争にあふれている。米中の覇権争い、アフガニスタン、ミャンマー、イスラム過激派テロ、そして台湾の緊張や北朝鮮核ミサイルなど、キナ臭さは高まる一方だ。この緊迫した世界情勢を解説した新刊書『世界の紛争地図 すごい読み方』からの一部抜粋で、世界各地の対立と紛争の背景をわかりやすくコンパクトに伝えていく。今回は、アメリカとの根深い対立関係が背景にある「イラン核開発問題」について解説する。

核開発をめぐる
欧米とイランの駆け引き

 世界で核兵器の保有を認められているのは、国連安保理常任理事国であるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5ヵ国しかないが、国際社会の承認を得ることなく秘密裏に核開発に成功した国や、核開発を進めているのではないかと疑われている国も存在する。そのひとつがイランである。

 イランはイラクの侵攻を受けた1980年代から核兵器の開発を進めてきたとされ、2002年に国際社会から疑惑の目を向けられた。核兵器の材料として利用する高濃縮ウラン製造施設の存在が明らかになったからだ。

 イランは核兵器をつくるためではなく、原子力発電所を稼働させるための「平和利用」だと主張して高濃縮ウランの製造を継続したが、欧米諸国はこれを信じずに計画の中止を繰り返し訴えた。しかし、イランは聞く耳をもたなかったため、欧米諸国は2006年以降、経済制裁を科すことになった。