リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。

ヤバい上司ほど「リーダーとしての自己採点」が高くなるワケPhoto: Adobe Stock

リーダーの悩みは募るばかり…

 リーダーの立場になると、他人の仕事ぶりが気になってくるものだ。

 たとえば、部下の不満をあげはじめたら、キリがないという人もいるだろう。

 その一方、パワハラや長時間労働といった職場の問題がクローズアップされるようになっている。

 また、人材の流動性もひと昔前に比べれば随分と高まっており、少しでも不満があれば、人はすぐに辞めてしまう。

 部下のパフォーマンスや態度に問題があっても、その伝え方を誤れば、その人のパフォーマンスが下がったり、チーム内の関係性が悪化したりしかねない。

 そこに離職が続けば、窮地に陥るのはリーダーである自分自身だ。

 だからこそ、メンバーになんらかの働きかけをするときには、かなりの気遣いや工夫が必要になる。

 ひとまず現状に甘んじて、何も言わずに我慢を重ねている人も少なくないはずだ。

 リーダーを取り巻く環境が、ますます窮屈なものになってきているのは間違いないだろう。

「自分はうまくやれている」と
胸を張れるリーダーの危うさ

 ここに追い打ちをかけたのが、外出自粛要請に端を発するリモートワークだ。

 自分がこれまでいかに「空間的な近さ」に依存していたのかを、多くのリーダーが実感することになった。

在宅ワークになった瞬間、これまで自分がリーダーとして何をしていたのか、さっぱりわからなくなってしまいました

 こんな話をよく耳にする。

 部下が目の届く場所にいなくなった瞬間、リーダーとしての自信が崩れ去ってしまったというわけだ。

 ただ、世の中の状況がどうだろうと、リーダーの仕事がなくなるわけではない。

 売上目標を達成したり、業務を回したりすることがリーダーには求められる。

 Zoomでしか顔を合わせないメンバーを、いったいどうすれば動かせるというのか。

 本当に彼らはやるべき仕事をやっているのか。

 そもそも彼らはいったい何を考えているのか。

 状況がよくわからないうちに、また人が辞めていく……。

 そんな悪循環に心当たりがある人も多いのではないだろうか。

 リーダーの悩みは募るばかりだ──。

 だが、それはきわめて真っ当な悩みだとも言える。

 それらの大半は、「旧来のリーダーシップ」と「世界の環境変化」とのギャップから生まれたものだからだ。

 だからこそ、いまの自分のリーダーシップに、多かれ少なかれ課題感を持てている人のほうが、リーダーとしてはまともである可能性が高い。

 逆に、「ここ数年、自分のリーダーシップにさほど疑問を持ったことがない」という人はかなり危うい。

 そのしわ寄せは、本人が気づかぬうちにチーム・組織を直撃しているのではないだろうか。

「自分はリーダーとしてうまくやれている」と胸を張れる人は、いまいちど自分のリーダーシップを振り返ってみてほしい。