決算書100本ノック! 2021冬#13Photo by Mieko Arai

2018年に勃発したシェアハウス融資問題がようやく解決に向かおうとしているスルガ銀行。だが新たに、投資用アパート・マンション向け融資(アパマンローン)を巡って引当金の計上リスクが急浮上している。特集『決算書100本ノック! 2021冬』(全16回)の#12では、アパマンローンがスルガ銀の自己資本をどれだけ毀損するのかを試算すると共に、スルガ銀が抱える“二つの火種”をあぶり出した。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

一難去ってまた一難!
シェアハウスの次は「アパマンリスク」が急浮上

「一難去ってまた一難。スルガ銀行にかつての魅力は残っているのだろうか」(大手地方銀行の幹部)

 2018年にシェアハウス向けの不正融資問題が発覚して以降、スルガ銀の評判はダダ下がりだ。

 不正が露見するまでは、金融業界で「地銀のお手本」とされていたスルガ銀。他行が及び腰になる高リスク商品の顧客を積極的に取り込むことで、高収益をたたき出す独自のビジネスモデルを構築してきた。

 しかし、シェアハウス向け融資の焦げ付きに備えて多額の引当金積み増しを余儀なくされたことにより、事態は暗転。19年3月期決算では、最終損益971億円の巨額赤字に転落した。

 スルガ銀の業績にかつての輝きはない。シェアハウス向け融資問題が勃発して以降、独自指標として掲げるRA(Risk Adjusted)業務粗利益(一般企業の売上総利益に当たる業務粗利益から、融資の貸し倒れに備えて積む引当金などから成る実質与信費用を引いたもの)は、右肩下がりだ。

 そのシェアハウス問題は「ようやく山場を越えた」(金融庁幹部)ものの、今年5月に1棟の投資用アパート・マンション向け融資(アパマンローン)を巡る問題が新たに浮上したことで、スルガ銀の本格再建には再度暗雲が垂れ込めている。

 シェアハウスやアパマンローンのリスクが、どの程度スルガ銀の自己資本を毀損することになりそうなのか――。ダイヤモンド編集部では、スルガ銀が11月26日に公表した説明会資料を基に、「投資用不動産向け融資問題の財務リスク」を独自に試算した。

 目下のところ、スルガ銀は筆頭株主である家電量販大手ノジマと“離婚協議”の真っ只中である。ノジマはこのままスルガ銀の保有株を売却するつもりなのか。それとも、スルガ銀株をノジマ以外から別途取得して共に経営掌握に動いてくれる賛同者を探すのか。その行方を見極めるためにも、スルガ銀の財務の健全性評価は金融業界で最大級の関心事となっている。

 以降では、意外な試算結果を提示すると共に、スルガ銀の経営を揺るがしかねない“二つの火種”の正体に迫った。