リモートワーク、残業規制、パワハラ、多様性…リーダーの悩みは尽きない。多くのマネジャーが「従来のリーダーシップでは、もうやっていけない…」と実感しているのではないだろうか。
そんな新時代のリーダーたちに向けて、認知科学の知見をベースに「“無理なく”人を動かす方法」を語ったのが、最注目のリーダー本『チームが自然に生まれ変わる』だ。
部下を厳しく「管理」することなく、それでも「圧倒的な成果」を上げ続けるには、どんな「発想転換」がリーダーに求められているのだろうか? 同書の内容を一部再構成してお届けする。

仕事の「楽しさ」や「情熱」に頼るリーダーが失敗するワケPhoto: Adobe Stock

「絶対にこれを実現したい!」
──「内側」から人を動かす原理

 前回までの連載からもわかるとおり、「外因的な働きかけ=モチベーション」を中心としたリーダーシップは、もともとかなりの無理を抱えている。

 しかし、時代や環境といった条件のおかげで、そんな無茶なリーダーシップが“機能できてしまっていた”にすぎないのだ。

 したがって、それらの条件が失われていくことは、リーダーにとってはチャンスですらある。

「やる気」に頼ることなく、人間にとってより自然な「内因的な原理に基づくリーダーシップ」を取り入れる絶好のタイミングだからだ。

 ところで、そもそも「内側から人を動かす」とはどういうことなのだろうか?

 内側から人を動かす際の原理は、次の2点に集約される。

① ゴール
② エフィカシー

仕事の「楽しさ」や「情熱」に頼るリーダーが失敗するワケ

 今回は「①ゴール」について見ていこう。

 まず、人を動かす内的な刺激として、真っ先に思い浮かぶのは「楽しさ」とか「好奇心」「情熱」といったものである。

 たしかにこうした感情は、人の行動の原動力となり得る。

 たとえば、楽器演奏に楽しみを感じている人は、他人から「楽器を弾きなさい」と強制されたり、それに対する報酬を提示されたりしなくても、つまり、外的な刺激が与えられなくても、自発的に楽器を弾くという行動を取ることができる。

 海外ドラマに夢中になる人も、視聴をやめると罰を受けるわけではないし、そこに何か実利を期待しているわけでもない。

 その人の内側にある好奇心がドライバーとなって、動画視聴という行動が引き起こされているわけだ。

 とはいえ、リーダーシップの文脈に置いてみた場合、「楽しさ」「好奇心」「情熱」といった感情だけに頼るのには無理がある。

 感情というのはその場かぎりのものになりがちで、持続性や一貫性に欠けるからだ。

 その時々で浮かんでくる想いは、たしかに行動のドライバーにはなり得るが、継続的にチーム・組織を動かす原理としてはあまりにも心許ない。

 だからこそ、人を持続的に動かすときには、ある種の目的ないし目標、「ゴール」が必要になる。

 人がなんらかの目標を持ち、「なんとしてもこれを実現したい!」「絶対にあれを達成するんだ!」という思いが生まれたときには、その人は外的な刺激を必要とすることなく、主体的に行動をとることができる。

 逆に、「何を目的にするのか」を見誤ると、持続的に行動を生み出す動力は生まれなくなってしまう

 したがって、内因的な原理に基づいたリーダーシップの第一のポイントは、そうした「ゴール」のデザインということになる。