国内農業機械最大手のクボタが、アジアでの売上高を5年で2・4倍に拡大する強気の計画を打ち出している。昨年度は1270億円、これを2013年度には3000億円に引き上げる。

 最大の業績貢献を見込むのはタイだ。3000億円のうち1850億円をタイで稼ぎ出す青写真で、そのための設備投資を矢継ぎ早に行っている。

 今年3月上旬にはタイにおけるコンバイン(収穫機)生産を開始。昨年3月から生産しているトラクターの生産能力も来年度には年間5万台体制に倍増させる。さらに今年末には海外初となる農機用部品の鋳物工場も立ち上げ、現地生産を推進する。

 クボタがアジアで攻勢をかける背景には、農機需要の急増がある。世界的な穀物価格の上昇により農家の所得が増加し、さらに都市化で農業人口が減少しているため、今後も需要の拡大が見込まれる。とりわけタイは1人当たりGDPが農機の普及水準といわれる2500ドルを超え、本格的な普及期に入っている。

「アジアでナンバーワンの農機メーカーを目指す」(益本康男社長)というクボタにとって、死角は中国とインドだ。

 タイのトラクター市場において、クボタのシェアは7割と断トツで、売上高は800億円に上る。ところが、中国における売上高は230億円にすぎず、インドに至ってはゼロである。

 中国の水田面積は日本の17倍、インドは26倍という巨大市場。しかし、中国とインドでは現地メーカーが圧倒的なシェアを握っている。性能面では日本メーカーが有利だが、現地メーカーの3倍ともいわれる高価格で、どこまで対抗できるか。

 逆に中国、インドメーカーがアジア各国市場へ進出してくれば、激しい価格競争に巻き込まれかねない。

 クボタの今期売上高は、欧米事業の大幅な不振で5年ぶりに1兆円を下回る見込みだ。アジア事業の成否が、業績回復の生命線を握っている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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