ニューノーマルの時代にはこれまでの勝ちパターンは通用しない。変革期に必要な新しい思考回路が求められている。それがアーキテクト思考だ。アーキテクト思考とは「新しい世界をゼロベースで構想できる力」のこと。『具体⇔抽象トレーニング』著者の細谷功氏と、経営共創基盤(IGPI)共同経営者の坂田幸樹氏の2人が書き下ろした『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法』が、9月29日にダイヤモンド社から発売された。混迷の時代を生きるために必要な新しいビジネスの思考力とは何か。それをどう磨き、どう身に付けたらいいのか。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けする。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。

海外駐在員が現場発の改革を起こすための、3つの方法Photo: Adobe Stock

海外駐在員としてできることは何か

 前回は、これから先海外駐在員が必要かどうかという質問に答える形で、現場に攻めの機能を持つ必要性について解説しました。

 今回はその学びを活かし、海外駐在員としてできることについて考えてみましょう。

フォロワーがいるからリーダーになれる

 海外で経営コンサルティングの仕事をしていると、「一海外駐在員の立場では、新しいことを始めたくても勝手には始められない」「本社の経営陣がなかなか決断してくれないので、せっかく現場が事業機会を発掘しても、結局芽が出ずに終わることが多い」といった声を聞くことが多々あります。

 多くの日系企業では、海外現地法人のトップを務める人間を日本から駐在という形で派遣します。

 しかしながら、現法社長という肩書きを与えればリーダーになれるという訳ではないということを強調したいと思います。その人物がアーキテクトとして現地における課題解決に向けた全体構想を練り、それに共感する人がついてきて初めてリーダーになれます。

 現場主義を標榜して現場に足を運んでは、目についた枝葉の事象に細かい指示を出して現場を混乱させるような経営者には人がついてきませんし、現場が消化できないような抽象的な指示を出して自分の仕事が終わったと思っている経営者もリーダーとはいえません。

 また、いつまでも「本社からのお客様」気分でいては、肩書の独り歩き状態でフォロワーが増えることもないでしょう。