外国人労働者受け入れ拡大は亡国の政策、進む先は「国破れてブラック企業あり」Photo:Pool/gettyimages

日本の産業界が求める「新しい時代のおしん」

 岸田政権の「外国人労働者拡大」が「事実上の移民政策」などと批判を受けている。

 マスコミ各社の報道によれば、家族を帯同できる在留資格「特定技能2号」について、受け入れ拡大を検討しており、事実上、在留期限をなくす方向だという情報もある。

 選挙で「日本を守る」と絶叫した保守政党が公約でまったく触れていなかった話を、なぜここにきて急に持ち出したか。普通に考えれば、自民党勝利に貢献した産業界、中小企業経営者への「論功行賞」だ。

「外国人労働者を入れないと日本は人手不足でおしまいだ!」というノストラダムス的終末論が、人口が右肩上がりで増えていた高度経済成長期から唱えられていることからもわかるように、日本の人手不足は「労働者の絶対数が足りない」というわけではない。問題は、低賃金や重労働で敬遠される産業・業界で働きたいという日本人が減少しているという、「雇用ミスマッチ」だ。

 このような「低賃金重労働」がビジネスモデルに組み込まれた業界が、喉から手が出るほど欲しいのは、かつて日本中が涙したNHKの連続テレビ小説「おしん」の主人公のように、過酷な労働条件でも文句ひとつ言わずに働く「奴隷」のような労働者であることは言うまでもない。

 が、日本の若者にそれをやらせるのは難しい。ある程度、社会が豊かになったこともあって、「仕事があるだけありがたいと思え」というロジックが通用しない。安い賃金やきつい仕事だとすぐに辞めてしまう。おまけに、「仕事のやり甲斐」とか「それ、パワハラですよ」なんて、「おしん」なら口が裂けても言わないようなことを、平然と言い始めた。

 そこで、産業界が“新しい時代のおしん”として期待するのが、外国人労働者だ。

 日本の若者にとって、低賃金で将来設計ができない、夢が抱けないような産業・業界は、海の向こうから「おしん」をじゃんじゃん呼べばみんながハッピーになる。戦前、日本の若者から敬遠された炭鉱業でも、「労力の輸入」(読売新聞1917年9月14日)という名目で朝鮮人労働者の受け入れが進められたが、これとまったく同じ発想だ。

 厳しい言い方をすれば、日本の経営者は100年前からほとんど進歩していないということでもある。