人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版後、すぐに重版が決まり、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せるなど、話題になっています。(初出:2021年11月27日。再掲載にあたって一部内容を再構成した)

尿一滴でがんが判明!?線虫がん検査の「意外すぎるデメリット」とは?【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

「線虫がん検査」って何?

 現在、「線虫がん検査」というトピックが話題になっていますが、耳にしたことがあるでしょうか?

 線虫とは「線形動物」というカテゴリーに属する長さ0.3-1mm程度の小さく細長い生き物です。この線虫には「嗅覚が非常に発達している」という特徴が存在します。

 ある条件下において、線虫がヒトの尿に含まれる「がん」の匂いを感知する特性を、がん検診に利用するという試みが注目を集めています。

 この検査は「リキッドバイオプシー」と呼ばれ、近年非常に研究が活発に進められている検査手法の一つです。

 基本的に医療機関で行われているがん検診は胃X線検査(バリウム検査)、胃カメラ、大腸カメラなど「侵襲的」、要するに体に一定の負荷をかけて体内のがんの存在の有無を確かめる方法がスタンダードです。

 一方、リキッドバイオプシーでは血液や尿などを採取し、液体(=リキッド)の成分からがんの存在を捉えにいくという、受け手にとっては非常に簡便で、体に負担のかからない検査方法になります。

 医師の立場としても体にとって侵襲性が少なく、且つがんを的確に発見できる検査であれば大喜びで紹介させていただきたい所ですが、この線虫がん検査(リキッドバイオプシー)、信頼性はいかがなものなのでしょうか?

 結論から申し上げると、「現段階では」医師の立場としてオススメできる手法ではありません。