ルーヴル美術館「ダ・ヴィンチ没後500年展」で展示された赤外線撮影の「サルバトール・ムンディ」ルーヴル美術館「ダ・ヴィンチ没後500年展」で展示された赤外線撮影の「サルバトール・ムンディ」 ©Yukinobu Shuzui

海外旅行ガイドブックの決定版『地球の歩き方』から、今回は「美術界の闇に迫った仏ドキュメンタリー映画とダ・ヴィンチゆかりの地」を紹介します。2017年、世界を驚かせる取引が成立しました。レオナルド・ダ・ヴィンチ作と言われていた絵画「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」が、競売会社クリスティーズにて世界最高額の4億5000万ドル(約510億円)で売却されたのです。ダ・ヴィンチ最後の作品とされ、男性版「モナ・リザ」と世界各国でセンセーショナルに報道されたこの絵画は、じつはダ・ヴィンチ作かどうかまだ真贋が定まっておらず、あまりに急激に釣り上がった価値とのアンバランスの上に、存在が成り立っています。その真実と闇に、フランスのドキュメンタリー監督でありジャーナリストのアントワーヌ・ヴィトキーヌ監督が迫ります。本記事では映画の紹介とあわせて、劇中に登場するスポットやダ・ヴィンチゆかりの場所を紹介します。(地球の歩き方 パリ特派員 守隨亨延)

美術界で優先されるのは
真実かそれともお金か

 2019年10月より、「モナ・リザ」を所有するパリのルーヴル美術館では、ダ・ヴィンチ没後500年の特別展が行われました。連日の入場予約はあっという間に埋まり、大きな成功を収めましたが、その中で大きくフォーカスされていた作品のひとつが、近年再発見されダ・ヴィンチ最後の作品かもしれないといわれている絵画「サルバトール・ムンディ」でした。