オミクロン株Photo:PIXTA

オミクロン株が日本経済に与える打撃をいかにして回避、あるいは最小化するか、各種データを用いて3回にわたり分析する。第1回は、病院の患者数などのデータから、水際対策と医療体制の拡充の問題について考える。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

オミクロン株の影響で
世界的に株価が暴落

 日本では新型コロナウイルス感染者が激減して、これで経済は正常に戻るのかと思ったら、またまた新たな変異株、オミクロン株が現れて世界的に株価は暴落、先行きが危ぶまれている。オミクロン株の感染力、重症化率が分からないので何ともいえないが、これに対して既存のワクチンや治療薬が有効でなく、その感染力、重症化率がこれまでと同じ程度であったなら、また、これまでと同じ程度の経済損失を受けるだろう。

 実質GDPは、コロナがなかった2019年度に比べて2020年度にマイナス4.4%、21年度にマイナス1.4%低下(ESPフォーキャスト調査21年11月10日の予測平均から計算)したから、合わせてマイナス5.8%の損失を受けた。オミクロン株によっても、やはりマイナス6%程度の損害を受けるだろう。

 ただし、オミクロン株の力が以上述べた通りだったとしても、前より良くなる可能性はある。これまでの経験で、感染症に対してどう対処したら良いかを学んでいるからだ。岸田文雄首相は、所信表明演説で「これまでの(コロナ対策の)対応を徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのかを検証します」と述べている。

 経済損失は、感染を抑えるために緊急事態宣言を発出し、人流を抑制するしかない状況に追い込まれることで生じる。外出しなければ働けないし、支出できなくなるからだ。感染者を抑えて緊急事態宣言の発出を少なくすることができれば、それだけ経済的損失は小さくなる。感染者、死亡者を抑えるためには、水際対策、クラスター対策とPCR検査での感染者の発見と隔離、マスクと3密対策、それでも感染者が拡大してしまった場合の医療体制の拡充、ワクチンの入手と接種体制の強化、治療薬の開発と入手が大事だと分かっている。

 これらのうち、今回は水際対策と医療体制の拡充の問題について考える。第2回ではワクチンの入手と接種、第3回ではクラスター対策とPCR検査について議論する。

水際対策が早かったため
「やりすぎ」との批判も

 岸田政権の水際対策は対応が早い。11月26日にアフリカでオミクロン株が発見され、30日には日本でも感染者が入国したのを見て、同日、全世界からの入国禁止措置を採った。また、ザルと言われた隔離についてもある程度強化しているようである。