薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰#4Photo:PIXTA

薬剤師人生は就職先で大きく変わる。代表的な職場は調剤薬局にドラッグストア、病院、医薬品メーカーだ。職場によってキャリアや年収はどう変化し、どれだけの“年収格差”がつくのか。特集『薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰』(全13回)の#4では、薬剤師のリアルな出世と懐事情を解剖する。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

管理薬剤師の“年収格差”は199万円
一般企業とは異なる薬剤師の給与事情

 企業で出世を目指すビジネスパーソンの登竜門は課長だろう。薬剤師にも同様に、キャリアアップの目安となるポジションがある。薬局やドラッグストアの現場責任者となる「管理薬剤師」だ。

 課長の場合、給与は大手企業の方が中小企業よりも高いことが一般的だ。管理薬剤師でも、薬局の規模によって199万円の“年収格差”がつく。しかし高給の条件は、実は一般企業とは正反対だ。

 日本薬剤師会によれば、薬局やドラッグストアの管理薬剤師の平均年収(2020年)は、20以上の店舗を持つグループでは650万円。一方、6~19店舗のグループでは733万円、2~5店舗は776万円、1店舗のみの薬局は849万円だった。つまり、同じ管理薬剤師であっても、薬局の規模が小さくなるほど年収が上がるのだ。

 現場の薬剤師の声からも、このことは裏付けられる。

 全国展開する大手ドラッグストアチェーンに勤務する薬剤師は、「わが社の管理薬剤師手当は月5000円で、年間わずか6万円。管理薬剤師にはなりたくない」と不満を漏らす。一方、小規模の調剤薬局に勤務する薬剤師は、「管理薬剤師になるだけで、年収は一律200万円アップする」とにこやかに話す。

 管理薬剤師だけでなく、一般薬剤師の平均年収(20年)も、1店舗のみの薬局は529万円であるのに対し、20店舗以上のグループでは461万円と、中小の方が大手よりも年収が高い同様の傾向が見られる。

 給与が低い大手と高い中小――。薬剤師の世界は、一般的なビジネスパーソンの世界とは、真逆の光景が広がっているのだ。

 薬剤師の代表的な就職先として、薬局やドラッグストアに加え、病院や医薬品メーカーがある。就職先によってキャリアはどう変わり、どれだけの“年収格差”が生まれるのか。薬剤師のリアルな給与とキャリア事情をひもといていこう。