生前贈与#6Photo:PIXTA

累計2500万円まで非課税で贈与できる「相続時精算課税制度」。だが、相続財産の前渡しにすぎないため、通常は相続税対策に向かない。しかし、人は選ぶが活用次第で大きな節税効果を生む“裏ワザ”もある。特集『生前贈与 駆け込み相続術』(全19回)の#6では、そのスキームを伝授する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

「週刊ダイヤモンド」2021年12月18日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

財産の前渡しにすぎない
「相続時精算課税制度」の活用術

「相続時精算課税制度」は、本特集#7『一般の生前贈与とどちらがお得?「相続時精算課税制度」の仕組みと落とし穴』で詳述するように、「60歳以上」の親と祖父母が「20歳以上」の子や孫に贈与する場合は最大2500万円まで贈与税を課税せず、相続発生時に相続財産に合算して相続税を課税する制度だ。同制度には、子や孫の自宅取得に限り特例がある。

 この「住宅取得資金に係る相続時精算課税の特例」は、子や孫が本特集#16『一括贈与「3つの特例」を使い倒せば節税効果は絶大!2022年からの制度変更にも要注意』で見る「住宅資金の一括贈与」の特例に該当する住宅を購入する場合、相続時精算課税の贈与でも贈与者(財産を渡す人)の「60歳以上」の要件を外し、さらに非課税枠も2500万円から3500万円へと拡大する。

 しかし、相続時精算課税制度による財産の前渡しであることには変わりがないため、相続発生時に相続財産に合算されてしまう。それ故、子や孫の住宅購入資金贈与の際に相続税対策を検討するならば、あくまで一般贈与(暦年贈与)の特例である「住宅資金の一括贈与」を優先した方がよい。相続財産に合算されないだけでなく、相続発生時からさかのぼって3年以内の贈与でも同じく相続財産に持ち戻しされることがないからだ。

 だが、まとまった現金があり、条件が合うならば、相続税対策に有効な相続時精算課税制度を活用した不動産贈与術もある。次ページで詳しく解説しよう。