アウディの電気自動車e-tronシリーズ(本国仕様)

「技術による先進=Vorsprung durch Technik」を社是に掲げるドイツのアウディは、2021年夏、26年以降に登場する全てのモデルに電気駆動システムを搭載すること、33年を最終期限とし、内燃エンジンの生産を終了することを表明した。同社が21年8月25日に発表した、持続可能で未来志向の企業戦略「Vorsprung 2030」の概要と、すでに市販が開始されているBEV(Battery Electric Vehicle=電気自動車)「e-tron」 の魅力と実力を紹介する。(文・数藤 健 写真・AUDI AG)

2026年以降の新型車は全てBEVに

「quattro 4輪駆動システム」、軽量化と低燃費に貢献するアルミ製「アウディスペースフレーム」、対向車や先行車を検知しハイビームの照射を自動で配光する「マトリクスLEDヘッドライト」……。アウディの新技術は自動車の進化に大いに寄与してきた。そして同社は近年、eモビリティーに関連する数々の特許を取得しさらに変革を加速している。

 未来においても「技術による先進」に基づいた経営・開発方針を継続するための企業戦略Vorsprung 2030の策定に当たり、同社のマルクス・ドゥスマンCEOはこう語った。

AUDI AGのマルクス・ドゥスマンCEO(右)

「CO2の排出や地球温暖化など、世界が抱える主要な問題は、クリーンテクノロジーを活用して解決していかなければなりません。そのため、アウディのスローガンである“Vorsprung durch Technik”の重要性は、今後も変わることがありません。私たちは、お客さまの自由とパーソナルモビリティーを保証する会社であると自負しています」

 世界が抱える諸問題を、新技術を活用して解決することを宣言。プレミアムなパーソナルモビリテーと、持続可能性への妥協のない取り組みを両立する決意を示した。

 ロードマップとしては、グローバルで2025年までに20車種以上のBEVを市場に投入し、26年以降のニューモデルは全車BEVとし、内燃エンジンの製造は33年に終了する。また、50年までにCO2排出量正味ゼロ(カーボンニュートラル)の会社になることを目指している。

 BEV用の包括的エコシステムの開発にも取り組む。高機能・高知能のハードウエアと、予測的サービスを含む納車後のサービスやソフトウエア・アップデートを充実させ、顧客とのコミュニケーションを緊密にして将来の自動運転車導入を視野に入れつつ邁進する。

「アウディは、どの自動車メーカーよりも一貫性を持って、主要なセグメント全てにおいて、製品ラインアップをBEVに置き換えています。これは会社全体にとって大きな変化です。しかし、私はこの変化を大きなチャンスだと考えています」(ドゥスマンCEO)

 総合的・俯瞰的な視点に立ち、社会および社会状況との関連性を常に念頭に置いて、イノベーションを加速しているのだ。

 変革戦略は奏功しており、21年1~9月期はコロナ禍の影響を受けた半導体不足があったにもかかわらず全世界で対前年同期比13.5%増の134万7637台の販売を記録。収益性も高まっている。営業利益は20年の1億1400万ユーロから38億5200万ユーロへ、営業利益率は20年の0.3%から9.5%に伸長している。