みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真相をえぐる本特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)の#12では、みずほが起こした最初の大規模システム障害の被害者となった中小企業経営者のインタビュー記事をお届けする。銀行の決済機能がマヒしたら企業の生死に関わる――。みずほのシステム障害の罪深さと本当の怖さの生々しさが伝わってくる。

「週刊ダイヤモンド」2002年5月25日号特集「みずほ漂流銀行」を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

実害はない?ふざけるな!
中小企業経営者の怒りの声

●宇佐見弘・セーフティ&ベル社長インタビュー

「実害はない?ふざけるな!」みずほ最初のシステム障害で中小企業経営者が憤怒の抗議宇佐見弘・セーフティ&ベル社長

「ふざけるんじゃない!」――。

 防犯・防災システムなどを手がけるセーフティ&ベル(本社・東京五反田)の宇佐見弘社長は、2002年4月9日夜、自宅で見ていたテレビ画面に向かって、思わず声を荒げた。

 ニュースでは、大規模システム障害の件で国会に呼ばれて事態の釈明に追われるみずほホールディングスの前田晃伸社長の顔が大写しになっており、その口から「実害がなかった」という言葉が飛び出したからだ。

「どうしたらあんな発言ができるのか。われわれ中小企業がどんな思いであの日を乗り切ったのか知っているのか」