総予測2022#中国経済対談Photo:South China Morning Post/gettyimages

恒大問題で揺れる不動産市場の行方は!? 5年に一度開かれる2022年の共産党大会は何がポイントに!? 日本の産業界への影響が大きく、いつになく注目が集まる中国経済はどこへ向かうのか。特集『総予測2022』の本稿では、動向を長年ウオッチしてきた専門家である大和総研の齋藤尚登主席研究員、日本総研の関辰一主席研究員の両氏がシナリオの先行きを徹底討論した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「週刊ダイヤモンド」2021年12月25日・2022年1月1日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。

2022年の予想成長率は5.4%で一致も
リスクシナリオや不動産市場の見方に違い

──中国経済の見通しと想定シナリオをどう考えていますか。

齋藤 2022年の中国の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年比で5%台前半程度の伸びとなるのがメインシナリオです。

 具体的には5.4%増と試算しており、この発生確率が8割以上の想定。ワーストシナリオでは極端な減速リスクを考える必要があり、恐らく発生確率としては1割以下ですが、その場合は2%台となる可能性もあります(21年通年は8%の予想)。

 分岐点は不動産市場です。これは第1波、第2波で考える必要があります。

 問題の中国恒大集団については貸し倒れという話もある一方、中国の銀行の貸倒引当金が5.6兆元(約96兆円)ほどある。有利子負債の中の銀行貸し出しが1700億元前後とすると、第二、第三の恒大という言い方をすれば、もし“第三十の恒大”が発生しても国内で処理できるイメージです。

 そうであれば、第1波で中国経済がおかしくなる、金融リスクが起きるといった可能性は極めて低いと考えます。

 第2波があるとすれば、不動産価格の下落です。ざっくり言えば、3割下落すると銀行の不良債権化リスクが高まります。

 住宅ローンは頭金を3割入れ、残りを担保設定するので、取得時より3割以上下がると不良債権リスクが高まる。ポイントはここですよね、不動産価格がどこまで下がるか。22年は中国共産党全国代表大会(党大会)を控える中でそこまでの下落は考えにくく、発生確率は1割以下であるものの、不動産の暴落は頭の隅に入れておくべきだと思います。

 私も22年の成長率は5.4%と、潜在成長率並みに持ち直すとみています。

 要因としては大きく三つ。一つ目は、21年は政府が厳しい投資抑制策を実施したものの22年は投資抑制策が緩和され、GDPに占める総資本形成の度合いの寄与が大きくなるとみていることです。

 22年は党大会があり、経験則上、党大会の年は政府が景気を盛り上げるため対策を講じると考えられます。私が20年までの30年間についてGDP成長率を1年ずつ集計したところ、党大会がある5年に1回の勝ち負け(前年と比べた成長率)は、上がった年が4回、下がった年は2回と勝率が高くなっています。

 二つ目に、電力不足問題の緩和です。石炭価格下落で電力不足が和らぎ、製造業の正常な操業に結び付いていくだろうとみています。

 三つ目は、自動車の半導体不足が既に解消に向かいつつあり、最悪期を抜け出したこと。生産体制が整うに従い、自動車販売の正常化につながるとみています。

齋藤 もう一つ加えるなら、新型コロナウイルスの感染拡大がどうなるか。当局はゼロコロナを目指している以上、非常に神経を尖らせています。22年の旧正月に向けて1月ごろから民族大移動が始まる。その後、2月4~20日に北京で冬季五輪が開かれる。それが終われば3月上旬からは全国人民代表大会(全人代)が始まる予定で、全国から代表が集まってきます。

 22年1~3月期までは、接触型の消費は下押しになる可能性がありますが、その後は電力不足や半導体供給が改善し、コロナ関連でも気を緩めてよい状況になりやすい。このため、4~6月期ごろから目に見えて経済状況が良くなる見通しを描いています。

──リスクシナリオについてはどう考えていますか。

 気になるシナリオが大きく五つあります。