革新機構のルネサス支援が決着<br />NEC、日立は資金負担で合意ルネサスの赤尾泰社長。8月の決算会見以来、4カ月ぶりの登場になりそうだ
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 実現を目前にして足踏み状態が続いていた半導体大手、ルネサスエレクトロニクスへの官民による支援計画が、ようやく正式決定する見通しだ。

 焦点となっていたルネサスの追加人員削減に伴う親会社3社の負担は、三菱電機がルネサスの従業員約300人を受け入れ、NECと日立製作所が人員削減費用など数十億円を負担することで大筋合意した。ルネサスの人員削減と親会社の負担内容に一定のめどがついたことで、官民ファンドの産業革新機構もルネサスへの出資を決め、10日にも正式発表する方針だ。

 革新機構にとって、親会社に一定の負担を負わせることは譲れない条件だった。「ルネサスは2010年の発足当初から、やるべき構造改革をやらずにずるずると続いてきた。親会社に責任がないとは言わせない」と革新機構幹部は強調する。そこで、革新機構はルネサスから追加で人員削減する従業員のうち約1000人を引き受けるよう、親会社3社に迫っていた。

 親会社の判断は割れた。関係者によると、1万人規模のリストラを進めているNECは従業員の引き受けを拒否。一方、三菱電機は早々に引き受けを容認した。この三菱電機の判断に、日立が激怒したという。3社で協調し有利な条件を引き出そうともくろんでいた日立内部からは「三菱が簡単に折れたから駆け引きすらできない」との恨み言が聞こえる。

 結局、グループ子会社で人員削減を進める日立はNECと共に資金負担を選択。革新機構も「一定の落とし前をつけさせた」(前出の幹部)として、計約1900億円の出資を決めた。

 ようやく実現する革新機構によるルネサス支援の課題の一つは経営陣の交代だが、赤尾泰社長の後任の人選が難航中だ。「追加の人員削減や工場整理などの“汚れ仕事”をやり切ってもらうまでは赤尾さんが適任」(関係者)との声もあり、革新機構の出資発表後もしばらくの間、赤尾社長が続投する可能性も浮上している。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)

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