中国に代わって東南アジアが「世界の工場」に?工作機械メーカー絶好調の背景中国の工作機械需要の伸び率は鈍化している。その一方で、中国以外の国と地域では、わが国の工作機械への需要が旺盛だ。写真は中国の半導体工場 Photo:VCG/gettyimages

日本工作機械工業会によると、11月までの年初来の受注額は、前年同期比で内需が56.8%増、外需は84.9%増だった。東南アジアで電気自動車と半導体の直接投資が増えているのが背景だ。中国から移管した生産拠点をさらに別の国に移す企業が増加し、世界のサプライチェーンの再編が一段と加速していることは大きい。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

岸田政権にエネルギー政策の
転換を急ぐ雰囲気が感じられない

 わが国の工作機械メーカーの受注が増加基調で推移している。重要なポイントは、脱炭素とデジタル化が加速する世界経済、特に東南アジア新興国での産業構造の激変に、工作機械メーカーが対応しようとしていることだ。今のところ、わが国の工作機械メーカーはモノづくりの底力を発揮し、電気自動車(EV)や脱炭素など先端分野での需要を獲得する力を維持している。

 ただし、長期的に高い競争力を維持できるか否かは不確実だ。特に、世界経済では脱炭素を背景に新しいエネルギー革命が加速し、産業構造の変化もさらに激化する。そうした状況下、わが国の工作機械メーカーの製造技術向上を支えた要素の一つである自動車産業は、世界的なEVシフトへの対応が遅れている。デジタル分野でもわが国企業の遅れは深刻だ。

 懸念されるのは、岸田政権に経済安全保障の根幹であるエネルギー政策の転換を急ぐ雰囲気が感じられないことだ。中長期的にわが国の工作機械メーカーなどの競争力が維持できるか否かは慎重に考えざるを得ない。