1963年に日本初の外資系ホテルブランドとして東京・赤坂で誕生した東京ヒルトン。日本に進出して59年目を迎えるホテルオペレーターのヒルトンは、2021年9月に開業したラグジュアリーブランド「ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts」を含め、現在国内で5ブランド19ホテルを展開、26年までに日本初の3ブランドを含めた10軒を開業する予定だ。グローバルホテルオペレーターとしてホテルのリブランドにも圧倒的な実績を持つヒルトンの強さと今後の戦略について、ヒルトン 日本・ミクロネシア地区開発担当副社長藤本博久氏に聞いた。

ヒルトン日本・ミクロネシア地区 開発担当副社長
藤本博久氏

日本地区で多様なブランドのホテルを積極的に展開

 約60年前の日本での開業以来、ヒルトンは日本市場を、アジアを代表するマーケットとし常に大きな可能性を見いだしてきた。実際にアジア太平洋地域にヒルトン系のホテルは500軒ほどあるが、この地域の大きな売り上げと利益は日本のマーケットから出ているという。

「日本市場はここ数年、インバウンドの伸びに支えられて急速な成長がありました。それと同時に、お客さまの求めることが多様化し、画一的ではない多様なホテルブランドのニーズが高まっています。ヒルトンではこうしたトレンドを受けて、既存の5ブランドに加え、2026年までに日本初の3ブランドを展開する予定です。また東京・大阪・名古屋などの主要都市に加え、第2・第3層の地方都市や、リゾート拠点にも積極的に参入していく考えです」

 ヒルトン日本・ミクロネシア地区 開発担当副社長の藤本博久氏は、そう説明する。

 現在国内で展開しているのは、「ヒルトン」「コンラッド」「ダブルツリーbyヒルトン」「キュリオ・コレクションbyヒルトン」「LXR」という五つのブランド。ここに新たに加わるのは、同社最上級のラグジュアリーブランド「ウォルドーフ・アストリア」と、ライフスタイルブランドの「キャノピーbyヒルトン」、フォーカス・サービス(宿泊特化型)の「ヒルトン・ガーデン・イン」の三つだ。

 多様なホテルブランドを市場に投入していくメリットはどこにあるのか。藤本氏は、大阪におけるブランド展開を例に挙げて説明する。大阪には現在「ヒルトン」「コンラッド」の2ブランドがあるが、今後「ダブルツリーbyヒルトン大阪城」(24年)「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」(24年)、「ウォルドーフ・アストリア大阪」(25年)を開業予定だ。

「同地区に多様なホテルブランドを持つことは、ホテル運営にとって大きなアドバンテージになります。例えば、19年に大阪でG20が開催されたとき、首脳級クラスのVIPはコンラッドに、その他のお客さまはヒルトンに、という受け入れ体制が可能になりました。サービスやプライス、ロケーションの違う複数のブランドを同地区に持つことは、セールスマーケティング上で大きな強みになります。また購買やオーガニゼーションを共有化することでコストのシェアリングができるなど、運営効率も向上できます」