室伏との好勝負のチホンも
アテネの4選手がメダル剥奪

 先週、スポーツ界の影の部分を垣間見せるニュースが飛び込んできた。

 5日に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で、アテネ五輪メダリスト4人に対しドーピング(薬物使用)による失格→メダルはく奪の決定が下されたのだ。いずれも陸上競技投てきの選手。男子砲丸投げで金メダルを獲得したユーリー・ビロノク(ウクライナ)、男子ハンマー投げ銀のイワン・チホン(ベラルーシ)、女子円盤投げ銅のイリーナ・ヤチェンコ(ベラルーシ)、女子砲丸投げ銅のスベトラーナ・クリベリョワ(ロシア)である。

 なかでもハンマー投げのチホンは室伏広治のライバルとして好勝負を繰り返した選手でもあり、記憶にある人も多いだろう。ハンマー投げはドーピング問題の多い種目だが、アテネ大会ではそれを巡って騒動が起きた。1位の記録を出したアドリアン・アヌシュ(ハンガリー)が金メダルを受け取ったが、後になってアヌシュがドーピング検査用の尿を他の選手のものとすり替えていたことが発覚。IOCは再検査を要請したが、アヌシュは拒否し続けた。そのためIOCはアヌシュをドーピング違反者と断定。アヌシュを失格とし、2位だった室伏に金メダルを与えたのだ。

 この時3位だったのがチホンで、アヌシュの失格で2位に繰り上がったが、そのチホンも今になってドーピングで失格になった。アテネ大会のハンマー投げはメダリスト3人中、室伏を除く2人がクロという酷い結果になったわけだ。改めて室伏のすごさが判る。

 なお、チホンはアテネ大会こそ今回の決定が下されるまでセーフと見られていたが、その後も常にドーピングの影がちらついていた。08年北京五輪では3位に入ったが、検査で禁止薬物が検出されいったんは失格になった。しかし、スポーツ仲裁裁判所に訴えたことで処分撤回を勝ち取り銅メダルを獲得する。だが、今年のロンドン五輪は再び疑惑が浮上したため欠場した。