「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。株式投資で「勝つ人と負ける人の差」を尋ねてみると、知識や経験以外にも重要な要素があることを教えてくれた。

株トレPhoto: Adobe Stock

ワクワクしている人は行動が早い

──窪田さんは25年にわたってファンドマネジャーとして活躍してきました。勝てる人、勝てない人の共通点はありますか?

窪田真之さん(以下、窪田):ファンドマネジャーを見ていて思ったのは、ゲーム感覚で楽しんでいる人は勝ちます。「よっしゃぁ、もらった」とワクワクしながら買って、ダメだったら「ウッソ~。何これ」と笑いながら売っているような人です。

 逆に、深刻に考えすぎて、慎重に慎重を期すファンドマネジャーは勝てません。お客さまのお金をゲーム感覚で運用しているというと不真面目に聞こえるかもしれませんけど、でも、ワクワクしながら楽しんでいるファンドマネジャーの方が成績が良いのです。

──なぜワクワク感が大事なのでしょうか。

窪田:ワクワクしている人は「勝つ時は勝つし、負ける時は負ける」「ダメだったら売って次の株に行けばいい」と考えるので、行動が早いのです。だから、いい株が値上がりしていく初動を掴むことができます。

 真剣に考えすぎてしまう人は、「ここで本当に買っていいか」「もう少し待った方がいいか」と悩みますから、ワクワクしている人と比べて1テンポ遅くなります。

──投資を楽しむことって大事なのですね。

窪田:個人投資家も同じだと思っています。売買を楽しんでいる人は動きが早いですし、失敗したとしても気持ちの切り替えが上手です。負けても楽しい、次はこんな方法を試してみようとか思う人は、長い目で見て勝つ可能性が高いと思います。

 逆に、老後が不安、給料が増えない、これからは真剣に投資しないといけないと気負っている人は負ける可能性が大きいと思います。

──1回、2回の結果に囚われすぎないことが大事ということですね。

窪田:もちろん勝ち負けは大事です。しかし、単に利益と損失を見るだけではなくて、良い負けと悪い勝ちは区別する必要があると思います。良い負けは仕方ないとあきらめるだけですが、悪い勝ちに気をつけなければなりません。

不運の負けは仕方がない。ラッキーだけの勝ちは続かない

──良い負けとは、どんなものですか?

窪田:例えば、強い買いシグナルが出て買った翌日に、どこかで戦争が起きて市場全体が暴落したり、たまたま悪材料が出て下がったのなら、それは良い負けです。きちんとチャートのモメンタムを見て買っているわけですから、その時は不運で負けたとしても、同じことを長く続けていけば勝てるはずです。

 一方、チャートに売りシグナルが出ているにもかかわらず、「この株は一生懸命調べた」「いい株だと思う」といった理由で買う人がいます。その結果として損したら、それは悪い負けです。

──悪い勝ちというのはどういう勝ちですか?

窪田:ラッキーのみで勝つことです。例えば、テーマに乗っていると聞き、チャートも見ずに買った株がたまたま値上がりすることもあります。暴落している株を逆張りで買って、たまたまうまく反発することもあります。それは運のみの勝ちです。

 それを実力と勘違いしたり、味をしめてしまうと、話題の株や暴落している株を次々と買いたくなります。ラッキーは何度も続くものではありませんので、そのうちに暴落に巻き込まれるなどして大きな損をすることになるのです。

──売買する前にきちんとチャートを見る習慣が大事ですね。

窪田:そう思います。私はファンドマネジャーだった頃から、東証一部の銘柄のチャートを全てチェックしていました。社名などは見ず、上がりそうなら○、下がりそうなら×、どちらとも言えないものは△を機械的につけていくトレーニングで、それがチャート読みの勉強になったと思っています。

──そこで買いたい銘柄も見つかるのですね。

窪田:はい。○×△をつけていくと、たまに◎をつけたくなる銘柄や×を2つ重ねたくなる銘柄が見つかります。こういう銘柄はファンダメンタルズ分析に関係なくチャートに従います。◎なら買い、×2つなら売りです。

 また、○や×をつけた銘柄をあらためて見ていくと、半導体関連が多いとか、バイオ系が多いといった傾向も見えてきます。市場で買われているテーマが見えてくるのです。そのような市場全体の流れを掴む上でもチャートを徹底して見ることは大事ですし、私の本も、実践に近い感覚でチャートの見方を学べるように作りました。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト。
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。