東京都で初めて新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」の市中感染が確認され、年末年始の予防対策についてパネルを使って説明する首相の岸田文雄東京都で初めて新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」の市中感染が確認され、年末年始の予防対策についてパネルを使って説明する首相の岸田文雄 Photo:JIJI

 岸田文雄が首相に就任したのが2021年10月4日。それからちょうど3カ月の節目と重なるように22年の新年が明けた。岸田側近が「風格のようなものが出てきた」と語るように岸田政権は安定軌道に入ったかに見える。

 1年前を思い起こせば、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、当時の首相、菅義偉は1月7日に2度目の緊急事態宣言を発令した。しかし感染拡大は収まらず内閣支持率は低迷、9月の自民党総裁選を前に菅は事実上の退陣に追い込まれた。この間、菅に対しては「後手後手」「小出し」「説明不足」などの批判が寄せられた。

 一方の岸田は20年9月の総裁選で菅に大差で惨敗して以降、無役で雌伏の時を余儀なくされた。その菅への反発もあったのだろう。コロナ対応では、菅の向こうを張るように「先手、先手」を打つ。「オミクロン株」の急拡大を受けた水際対策では、一気に全世界を対象に外国人の新規入国を禁止した。菅周辺からは「経済へのダメージが大き過ぎる」との批判が出たが、岸田は一顧だにしなかった。

 さらにオミクロン対策として、市中感染やクラスターの発生地域を対象に無料のPCR検査の実施を決断した。安倍晋三政権で感染拡大が始まって以来、対策の3本柱の重要性がたびたび指摘されてきた。(1)検査体制の確立と普及(2)ワクチンの確保と接種体制の確立(3)治療薬の有効活用――。危機管理の専門家はこう警告していた。

「これら全てにおいて科学的思考に欠け、その結果、場当たり的で後手、後手の対応になった」