「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha氏。
「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓した。本書では、「挫折した話こそ教科書になる」「本は自分と意見の違う人間がいる意味を教えてくれる」など、人生を支える「土台」になるような本の読み方を、30個の「本の効用」と共に紹介する。

謙虚になるための「良い読書」、正義を押し付ける「悪い読書」Photo: Adobe Stock

人間は「ポンコツ」だから気楽に生きよう

もうちょっとみんな気楽に生きてもいいんじゃないか」と、僕はいつも思っている。

 人間という生き物は欠陥だらけのポンコツだ。だから、ミスをするのは当たり前だ。

 だけど、最近の世の中はみんな理想が高すぎて、人間に対して完璧を求めすぎる。人の失敗に対して異常に厳しい。

 もっと、人間のことを詳しく知れば、自分にも他人にも寛容になれるはずなのに。読書というのはそのためにあるはずだ。

 そう思って書いたのが、『人生の土台となる読書』という本だ。

 この本では、「人間は意外とダメな生き物だ」「だから失敗してもしかたない、気楽に生きよう」ということを伝えるために、さまざまな本を紹介している。

 どんな本を紹介しているかというと、例えば、ダメ人間や、失敗した人や、一般的な生き方から外れた人のことを紹介した本

 そうした本を読むことで、「こんな生き方もあるんだ」「もっと自由に生きてもいいんだ」という気持ちになって、社会のプレッシャーから解放されることができる。

 または、社会学や脳科学や進化心理学などの、人間という生き物の性質について解説した本

 そうした本を読むことで得られるのは、「人間が間違うのはしかたない」という認識だ。

 人間はさまざまなことを自分で判断していると思い込んでいる。だけど、実はその選択は、周りの環境や、遺伝的な要素や、脳の認知バイアスの影響をかなり受けている。

 それならば、間違った選択は自分のせいではない

 ついジャンクフードばかり食べてしまうのも、ギャンブルでお金を失ってしまうのも、人間関係で失敗してしまうのも、人間の心がもともとそうした傾向を持っているからなのだ。

 そう考えると、気持ちがラクになってこないだろうか。

「わかりやすい物語」の危うさ

 たくさんの本を読むことで得られるものは、謙虚さだ。

 読書をすると、人類の歴史は間違いだらけで、自分もその例外ではない、ということを知ることができる。

 そして、たくさんの本を読むと、世の中にはいろいろな視点があって、絶対的に正しい考え方はないということがわかってくる。

 この世界は複雑でわかりにくい。その複雑さを実感すると、人間は自然と謙虚になっていく

 そして謙虚になると、他人に自分の理想を押し付けようとしないので、気持ちもラクになっていく。

 人間にはわかりやすい物語を好んでしまうという、認知バイアスがある

 例えば自己啓発書は「こうすればいい」「こうすればうまくいく」ということをスパッと言い切ってくれる。それは切れ味がよくて気持ちいいし、やる気も出てくる気がする。

 もしくは、陰謀論などもそうだ。陰謀論はこの複雑な世界を、「あいつが悪い」という黒幕を設定することで、わかりやすく説明してくれる。

 わかりやすいものは気持ちいいし、役に立つときもある。

 しかし、あまりにもわかりやすい物語は、人から謙虚さを失わせて、暴走させる危険がある。過去の虐殺なども、全て「正義のため」という物語の元に行われた。

 人間は、自分は間違っているかもしれない、と、ちょっと不安に思っているくらいがちょうどいいのだ

 知性というのは、「自分は間違っているかもしれない」と常に問い直す姿勢のことだ。

 よい読書をすると、知性や謙虚さを身につけることができる。

 そして、自然な自信を持てるようになって、周りに何かを言われても振り回されないようになる。

 そんな読書をするにはどうしたらいいかを、約100冊の本を紹介しながら、この本で伝えていきたいと思う。

pha(ファ)
1978年生まれ。大阪府出身。
現在、東京都内に在住。京都大学総合人間学部を24歳で卒業し、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳のときにツイッターとプログラミングに出合った衝撃で会社を辞めて上京。以来、毎日ふらふらと暮らしている。シェアハウス「ギークハウス」発起人。
著書に『人生の土台となる読書』(ダイヤモンド社)のほか、『しないことリスト』『知の整理術』(だいわ文庫)、『夜のこと』(扶桑社)などがある。