勉強、家計簿、早寝早起き、片づけ、禁煙、ダイエット、運動……これらは「今度こそは!」と決意した情熱とは裏腹に何度も挫折を繰り返す。なぜ、新しい習慣は簡単に身につかないのだろうか。習慣を定着させるための、最初の抵抗を乗り越える3つのコツを、習慣化のプロとしてこれまで5万人を指導し、1000人以上をコーチングしてきた古川武士氏が伝授。古川氏が自分と対話し、整理するための「書くメソッド」を体系化した書籍『書く瞑想』から、一部を抜粋して特別公開する。

「なぜ、続かないのか?」<br />5万人を変えた習慣化のプロが教える<br />初期抵抗を乗り越える3つのコツPhoto: Adobe Stock

人は変化より「いつも通り」を求める

 英語の学習、家計簿、早寝早起き、片づけ、禁煙、ダイエット、運動、資格の勉強、貯金・節約、日記……これらは、「今度こそは!」と決意した情熱とは裏腹に何度も挫折を繰り返します。

 なぜ、私たちは決意しても続けられないのでしょうか?

 それは「習慣引力の法則」があるからです。

 人間には「新しい変化に抵抗し、いつも通りを維持しよう」とする本能があります。人間にとって変化は脅威で、いつも通りが安全で安心なのです。

 たとえば、体温を例に挙げてみましょう。私の平熱は36.5度ですが、人間の体はいつも通りの平熱を維持しようとします。変化に抵抗し、いつも通りを維持しているのです。

 良い習慣も一旦習慣化すると「いつも通り」になりますが、定着するには最初の抵抗を乗り越えていく必要があります。

 書く習慣のリズムは約30日で定着していきます。最初の抵抗をどのように乗り越えていくのか、3つのコツを紹介しましょう。

【習慣化のコツ1】
ベビーステップで始める

 まず、続けるコツとして、「小さく始めること」以上に偉大なコツはありません。

 私はベビーステップと呼んでいますが、徹底的に簡単なハードル、簡易なレベルにして始めることです。

 行動は始める前が一番億劫で、いざ始めてみると意欲は後から湧いてくるものです。「初動が9割」です。それでも乗らないならばやめればいいのです。

 続けられる人はベビーステップで行動するのが上手です。

 毎日1時間走るという目標も、スタート時は無理せず「15分のウォーキング」から始めたりします。そして、徐々に慣れてきたらランニングに変えて時間を延ばしていくという行動パターンをとります。

 このように小さく始めれば、現状維持の抵抗にも負けずに続けることができます。

 ベビーステップを決めるときには2つコツがあります。

 1つ目は時間を短くすること。たとえば、15分片づける、10分勉強する、20分走るといった具合です。

 2つ目は難易度を下げること。たとえば、1つの部屋だけ片づける、本を1ページは読む、ランニングではなくウォーキングにするなどです。

 書く習慣も最初は遊び感覚で楽しんで書くこと。時間がないときは1行、5分でも書ければいいのです。

 また、ジョギング、英語勉強、ダイエット、早起きもすべて、ベビーステップで始めるなら何をするかを決めてみてください。

 そして最初の7日間を着実に毎日、行動してください。最初の抵抗感を乗り越えたら、一気に楽になっていきます。

【習慣化のコツ2】
タイミングを決める

 次に、タイミング(いつ、どこで、何をするのか)を決めておくことです。

 習慣化している行動というのは、朝やったり夜やったりとランダムに行っているケースは少なく、ある程度固定しているものです。

 私は「毎朝15分」、「書く瞑想」を行います。朝に書いて1日を始めた方が気分がいいので、そのようにしています。迷う人には「朝に」書くことをお勧めします。

 もちろん、ライフスタイルや好みによっても違うので、自分なりに良いタイミングを見つけてください。最初の7日間くらいは、実験しながら続けやすいタイミングを見つけましょう。ポイントは続けることです。

 また、「土曜日の朝」「スタバで書く」という具合に場所と予定を決めておくといいでしょう。習慣化の行動はタイミングが命。タイミングを決めて、そこで書くようにしてみてください。

【習慣化のコツ3】
最高、最低の基準を作っておく

 一番続かないのは、完璧主義で考える人です。

 ゼロか100か、白か黒か、やるかやらないかで考えると始めにくいですし、途中でできない日が続くと再起不能になる傾向があります。

「書く習慣」も同じです。仕事で朝から忙しい日などは、書けない日もあるでしょう。1週間で2、3日抜けたからといって挫折感を感じる必要はありません。とにかく気長にコツコツやり続けて、人生をより良くしていくことを目的にしています。

 また、習慣化とは、生活、仕事、人生に規律を持ち込むためのルールです。

 ルールをあまりにもガチガチに決めすぎると窮屈になり、続かなくなります。その一方で何のルールもないと、それこそ多忙の中で忘却していきます。

 そこで、二重基準を持つことで、柔軟性を持たせることができます。

 この二重基準とは、「最高のルール」「最低限のルール」の2つのルールを持つことです。最高ならばここまでやる! 最低でもこれはやる! というものです。

 これは事例を見た方がわかりやすいと思うので、紹介しましょう。

【仕事の習慣】
「最高のルール」定時の17時半には仕事を終えること
「最低限のルール」遅くても19時半までには切り上げること

【運動の習慣】
「最高のルール」1日1万歩歩くこと
「最低限のルール」万歩計で計測すること

 このように、ルールに幅を持たせることで、日々の体調、都合に応じて柔軟に対応でき、何もしない日が減ります。これこそ習慣化で一番大切なことです。

 ルールは守るためにあるのですが、そもそも守れない最大の理由は、ルール自体に柔軟性がないからです。

 習慣の定着には、「最高・最低限のルール」を設定してみてください。

(本原稿は『書く瞑想──1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』からの抜粋です)