企業悶絶!インフレ襲来#12Photo:Insung Jeon/gettyimages

原油価格高騰の恩恵を受け、化学業界の各社は好業績をたたき出している。日本を襲うインフレは引き続き、化学業界に追い風となりそうだが、三菱、三井、住友の財閥系で明暗が分かれるかもしれない。特集『企業悶絶!インフレ襲来』(全13回)の#12では、化学セクターのトップアナリストである山田幹也・みずほ証券シニアアナリストが大胆に予想する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

原油価格の上昇で
好業績をたたき出す化学業界

 服、ペットボトル、洗剤、タイヤ……。私たちの身近にある、ありとあらゆる製品の“出発点”は原油である。

 化学企業は、原油を精製する過程で取り出されるナフサを仕入れ、さまざまな製品の原料であるエチレンなどの化学基礎原料、そして幾つもの過程を経て各種製品の素材であるプラスチックや合成繊維、界面活性剤などの化学製品を生産している。

 化学製品の“出発点”である原油の価格上昇は仕入れ高につながるものの、企業向け取引が多い化学企業は、価格転嫁に成功して好業績をたたき出している。

 原油価格の上昇を追い風に、旭化成と三井化学は2022年3月期に過去最高益を達成する見込みで、三井化学、三菱ケミカルホールディングス(HD)、住友化学の財閥系3社は22年3月期の業績予想を上方修正している。

 化学セクターのトップアナリストである山田幹也・みずほ証券シニアアナリストは「22年3月期ほどのモメンタムは衰えるものの、23年3月期も資源・素材インフレが続く見込みで石油化学業界には追い風となりそうだ」と指摘する。

 ところが、である。山田氏によれば、三菱ケミカルHD、住友化学、三井化学の財閥系3社で来期以降は企業スタンスの違いによって明暗が分かれるかもしれないというのだ。

 次ページからは、財閥系3社の企業スタンスの違いによって明暗が分かれそうな理由について、山田氏が鋭く解説する。