前CEO解任劇から見えた三つの誤算、山口FG「異形」のガバナンスPhoto by Takeshi Shigeishi

山口フィナンシャルグループ(FG)で昨年、トップが解任されたクーデター劇は銀行業界を騒然とさせた。その背景には、山口FGの三つの誤算がある。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

銀行業界騒然の半年に及ぶ“決闘”
山口FGの「三つの誤算」

 本州の最西端に位置する山口県下関市。関門海峡を望む海上交通の要衝として栄えたこの街は、日本の歴史を動かした数々の戦いの舞台として知られる。源氏が平氏を滅ぼした壇ノ浦の合戦、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘、攘夷の放棄と近代化のきっかけとなった下関戦争がそれだ。

 そして2021年、下関市に本店を構える山口フィナンシャルグループ(FG)で、銀行業界を騒然とさせる“決闘”が繰り広げられた。

「取締役会は再起動した。ガバナンス改善策を着実に実行し、遅滞なく新しい中期経営計画の具体的な検討を加速させる」

 12月24日、本店で開催された臨時株主総会終了後の記者会見。山口FG社長兼グループCEO(最高経営責任者)の椋梨敬介氏は、そう胸を張った。

 この日の株主総会で取締役解任を諮られるはずだった、前会長兼グループCEOの吉村猛氏が前日に辞任届を提出。吉村氏は6月25日の定時株主総会後、臨時取締役会で代表権を剥奪され、10月14日には取締役の辞任勧告決議を突き付けられていた。現経営陣の望み通りに吉村氏は辞任し、椋梨氏の“勝利宣言”により一連の騒動は幕を閉じたというわけだ。

 半年に及ぶ争いの原因はいったい何だったのか。取材から浮かび上がるのは、山口FGの三つの誤算だ。