元イェール大学助教授で現在は英語塾の代表を務めている斉藤淳氏の著書『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)は、保護者世代の「家庭で英語をどう教えればいいのか」、「どうすれば英語力が伸びるのか」という悩みを解決してくれる1冊だ。
本稿では本書より一部を抜粋・編集して、子どもが英語を勉強するモチベーションを失ってしまう「親の何気ないひと言」をご紹介する。

子どものやる気をなくす「親が絶対に言ってはいけないひと言」とは?Photo:Adobe Stock

「英語ができるだけの子」にはなってほしくない

「やはり英語漬けがいちばんなんですね?」

 こんな質問をときどき保護者の方からいただきます。たしかに、英語を「音」「かたまり」で摂取していくなら、英語を母語とする家族・教師・友人に囲まれながら、日常的に“英語のシャワー”を浴びるのがいちばんです。

 実際、これを小さなころから継続すれば、ある程度は英語が話せるようになるでしょう。

 ただ、ほとんどのお母さん・お父さんは、「英語ができるだけの子」になってほしいわけではないはずです。この世界をたくましく生きていくための一スキルとして、英語に可能性を感じていらっしゃるのだと思います。

「英語漬け」は子どものためになるのか?

 だとすると、英語のためだけに英語を学ぶ学習スタイルは、本当にお子さんのためになっているのでしょうか?

 子どもの時間は有限です。英語を学ばせる時間があれば、家族で旅行やキャンプに行けたかもしれませんし、おじいちゃんおばあちゃんに会えたかもしれません。友達と一生ものの思い出をつくれたかもしれませんし、大好きなスポーツや音楽に打ち込めたかもしれません。

 長期間にわたって主体的に学び続けるモティベーションは、むしろこうしたきっかけから生まれます。そんなチャンスを捨ててまで、「単なる語学の勉強」に時間を費やす価値があるのか、という視点はつねに必要です。

 第二言語習得(Second Language Acquisition、以下SLA)の研究からしても、「英語だけを学ぶこと」は次の2つの理由から推奨されません。

1)モティベーションが維持しづらい
2)学習効率が高まらない

学習し続けるにはモティベーション維持がカギ

 SLAの学術研究では、「外国語をマスターするためには学習の“継続”が不可欠だ」ということがわかっています。

 僕たちは通常、母語である日本語にさらされ続けていますから、いくら英語を勉強しても、すぐに「日本語の頭」に戻ってしまいます。本当に英語を身につけたければ、脳に対して継続的に英語の刺激を与え、自分なりに英語で何かを表現する作業を繰り返す必要があるのです。

 そして、一定期間にわたって学習を続けるためには、モティベーションの維持がカギになります。いかに動機づけを工夫するかも、言語習得の重要なファクターなのです。

子どものやる気を奪う「親の何気ないひと言」とは?

 モティベーションに関して気をつけていただきたいのが、何気ないひと言で、子どものやる気を削いでしまうことです。

 塾にやってくる子たちの能力には、当然のことながら差があります。しかし、その開きはみなさんが思うほど大きなものではありません。にもかかわらず、なぜグングンと伸びる子と途中で脱落してしまう子がいるのか?

 これは本人の自信によって説明できる部分が大きいと思います。

 自信がある子は、自分の英語力が伸びていくことに疑問を持っていません。彼らは「塾でこれだけ習っているのだから、僕が英語を話せるようになるのは当たり前だ!」とでも言いたげな顔をしています。

 一方、そうでない子の場合、保護者の言葉や態度に特徴があります。端的に言えば、子どもを褒めないのです。場合によっては、子どもの目の前で「この子、私に似て英語が苦手で……」とか「うちの子は、すぐサボる性格だからダメなんです」などと僕におっしゃる方もいます。

親のひと言が子どもの将来をつぶしかねない

 お母さんやお父さんの言葉にはものすごい力があります。こうしたひと言がどれほど子どもを傷つけているかを考えると、とても辛い気持ちになります。

「(そうか、僕はお母さんに似ているから、英語ができないのか……)」

「(たしかに私って、すぐにサボるダメな子だな……英語はあきらめよう)」

 一度こんなふうに子どもが思ってしまうと、それを取り戻すのには並大抵ではない労力と時間がかかります。

 英語は適切な方法で学ぶ努力を続ければ、どんな子でも身につきます。間違った知識に基づいた間違ったひと言で、子どもの将来をつぶすことは絶対にやめましょう。お子さんをどんどん褒めて、英語を使うことの楽しさを実感させてあげてください。

(本稿は『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』より一部を抜粋・編集したものです)