大阪市の夢洲Photo:PIXTA

大阪市は、カジノを含むIR予定地の土壌対策費790億円を負担すると昨年末に公表した。なぜ例外的に負担することになったのか。その経緯を知る手がかりとなる資料は「黒塗り」になっている。大阪維新の会も強く批判してきた、大阪市の過去の湾岸開発の二の舞にはならないか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

松井市長は大阪IRがもたらす
「市民へのリターン」を強調するが

 新型コロナウイルスの「オミクロン株」の感染拡大が止まらない中、その発信力で注目を集める大阪府の吉村洋文知事。一連の対応には批判もあるが、それでも人気は絶大だ。ただ、同氏が代表を務める大阪維新の会にとって「大阪都構想」に並ぶ看板政策である、カジノを含むIR(統合型リゾート)を大阪市の湾岸に整備する計画には、暗雲が垂れ込めている。

 大阪維新の会の“国政部門”である日本維新の会の代表で、維新の最高実力者である松井一郎大阪市長は2021年12月、IRの計画地である大阪市南西部の埋め立て地「夢洲」に土壌汚染や液状化の対策が必要であるとし、市の負担額が790億円になると公表した。

 さらに今年1月には、大阪メトロ中央線の新駅を夢洲に設置するための延伸工事の費用が、当初の540億円から、129億円膨らむ見通しであることも判明した。

 維新のキャッチフレーズは「身を切る改革」――。民間の手法を導入して行政コストを削減し、IRなどの成長戦略につなげると訴えてきた。

 松井市長は土壌対策費790億円について、「負担」と報じられたのがよほど気に障ったらしく、この金額が公表された21年12月20日、大阪府立大学の住友陽文教授に反論する形でツイッターに「IRの経済効果は年、1兆2000億円、カジノの負担金は大阪市だけでも毎年550億円、借地料が毎年25億円、これらが市民へのリターンです。これでも市民負担ですか?」と投稿した。