読書する男性読むたびにマーカーの色を変える理由は? Photo:PIXTA

スターバックスやザ・ボディショップなどでCEOを務めた岩田松雄氏。 多くの有名企業で実績を残してきた岩田松雄流の経営哲学を伝授する。今回のテーマは「読書」。岩田氏は「1つの分野で最低10冊は読む」「読むたびにマーカーの色を変える」という。その理由は?

『竜馬がゆく』を読んで
心を奮い立たせていた

岩田松雄岩田松雄(いわた・まつお)
リーダーシップコンサルティング代表。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車に入社。外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ役員を経て、ゲーム会社・アトラスの社長として3期連続赤字企業を再生。その後に社長を務めたイオンフォレスト(ザ・ボディショップ)では売り上げを約2倍に拡大させる。2009年、スターバックス コーヒー ジャパンCEOに就任。2011年、リーダーシップコンサルティングを設立。講演、研修、オンラインサロンを通じて経営者育成に取り組んでいる。主な著書に『新しい経営の教科書』(コスミック出版)、『ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由』(アスコム)など。 Photo by Teppei Hori

 冬の寒い日は家にこもって読書をするのにとても良い機会です。今回は、読書法についてお話ししましょう。とはいえ、趣味や教養のための読書というより、リーダーに向けた自己啓発としての、いわば勉強のための読書法です。

 私は20代の頃から、わからないなりに、ドラッカーなどのビジネス書を一所懸命に読んでいました。逆に、司馬遼太郎さんや城山三郎さんの小説を除いて、小説や純文学などはほとんど読みませんでした。むしろ、あえて読まないようにしていたのです。

 なぜなら、楽しみで読む小説は、自分の楽しみだけの世界であり、仕事に直接役立たない、ゴルフや遊びなどの娯楽と同じではないか。そういうことは、リタイア後の楽しみとして残しておこう。そう考えていたのです。恋愛小説なども、まったく興味がありませんでした。

 その後、単にビジネス書やハウツー本だけでなく、徐々に読書の範囲を広げていきました。歴代首相の指南役ともいわれた陽明学者、安岡正篤先生の本を読み、陽明学にも挑戦してみました。そこから『論語』などの中国の古典も読み始め、「人としてどう生きていくべきか」を学ぶ読書も始めました。

 本を読むことは、楽しみというより、何らかの目的や自分の勉強のために読んでいました。司馬遼太郎さんの小説を読む動機も、自分自身の志を固めたりするために読んでいた気がします。おもしろいもので、転職先が決まると『竜馬がゆく』が読みたくなり、それによって新しい会社に向けて心を奮い立たせていました。

 社会人になれば忙しくなるので、1カ月で読めるのは数冊程度かもしれません。通勤時間や会社の昼休みなど、平日は毎日少しでも本を読み、週末は午前中を読書の時間に充てることを、ひとつのルーティンとして位置づけるとよいでしょう。

 若いときに読むべき本は、目の前の業務に関わる本だと思います。