「かめない男」はメタボになるPhoto:PIXTA

 新潟大学などの研究グループは、以前から「咀嚼力」――ものを細かくかむ能力とメタボリックシンドローム(メタボ)との関係を調査している。

 昨年末には、2008年以降に大阪府吹田市で健康診断を受けた50~70代の住民599人(平均年齢65.8歳、男性254人)を対象にした追跡調査の結果が報告された。

 調査では、検査用に開発した「硬いグミ」を30回かみ、かみ砕いて増えたグミの表面積から下位25%の「咀嚼能力低値群」、それ以外の「正常群」にわけ、平均4.4年間追跡。ちなみに、正常群と比べ、男性の「低値群」は有意に高齢で高血糖の人が多く、女性は歯周の状態が有意に悪かった。

 参加登録時には、生活習慣病の有無やメタボのリスクになる喫煙、歯周病の情報も収集している。もちろん、参加した時点で既にメタボ(高血圧、高血糖、脂質異常、肥満が重なった状態)と診断された人は除外された。

 追跡期間中に新たにメタボを発症した人は88人(男性50人)。喫煙等の影響を調整して解析した結果、男性は咀嚼能力が正常な人に比べ、低値群でメタボのリスクが2.24倍と有意に高くなった。

 一方、女性には影響が認められなかった。個々の生活習慣病についても同様で、男性でのみ高血圧が3.12倍、高中性脂肪血症が2.82倍、そして高血糖が2.65倍とリスクが軒並み2倍以上に増す結果となった。

 研究者は「咀嚼能力が衰えた人は、無意識に硬い繊維質の野菜や果物、小魚などを避け、食べやすい加工食や白米など炭水化物の摂取が増えた結果、栄養が偏り、メタボリスクが上昇した可能性がある」としている。

 女性は、ホルモンの影響のほか、元々、健康的な食への関心が高く、硬いものを食べやすく調理することでバランスよく栄養を摂っていた可能性が高いようだ。

 さて、咀嚼能力の維持に不可欠なのは「自前の歯」と硬いものを食いちぎる咀嚼筋の「筋力」だ。男性諸氏は虫歯や歯周病に気をつけ、歯ごたえのある食材をバリバリかんでメタボ予防を心がけよう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)