キヤノンの中国デジカメ工場撤退に賞賛の嵐、地元を大切にする企業DNAとはPhoto:Future Publishing/gettyimages

中国から撤退する外資系企業、地方の役人の心情の変化

 人件費の高騰、中国のライバル企業の台頭、IT技術やAI技術などの進歩、消費者意識の変化など、中国経済をめぐる環境が目まぐるしく変わっている。

 こうした状況で、やむを得ず中国からの撤退に踏み切る外資系企業も多い。撤退するのは製造業だけではない。「21世紀の市場」と称されるほど魅力が増し、重要視されている中国からあえて撤退する小売流通業の大手もある。たとえば、長年、中国進出の成功例と見なされてきた仏資本の大型スーパー、カルフールだ。

 20年近く、日本企業の中国進出をいろいろな形で支援してきた私だが、この10年間は、むしろ日系企業の中国撤退関連の話がいつの間にか相当増えてきて、手伝っている。

 外資企業の誘致実績が人事考課の評価になる中国の現場では、地方の役人は外資系企業の撤退を快く思わない。ただ、近年になって撤退企業が増えたせいか、大きな流れに逆らえないと悟った地方の役人は、ようやく日常事務としてこうした撤退案件に処するようになった。その姿勢も撤退に反対するという頑な態度から、何のトラブルも起こさずに速やかに撤退してほしいという方向へと切り替わった。

 かと言って、撤退する外資系企業に心底から称賛の拍手を送る例は極めて少ない。そんな状況下、1月中旬に意外な事件が発生した。