経営者や著名人に圧倒的な信頼を得るインタビュアーの宮本恵理子さん。一瞬で相手の心をほぐし、信頼を得る宮本さんの聞く技術についてまとめた新刊『行列のできるインタビュアーの聞く技術 相手の心をほぐすヒント88』では、相手の心に寄り添い、魅力を良さを引き出す宮本さん独自の技術をふんだんに盛り込みました。今回は、宮本さんが業界のキーパーソンと「聞く技術」をテーマに語り合ったオンラインイベント「聞く技術フェスティバル」の内容を紹介します。聞くフェス6回目のゲストにお招きしたのが、楽天大学の仲山進也学長。チームビルディングなどにも造詣の深い仲山学長にとって、「聞く」とは一体、どういうことなのでしょうか。(構成/近長由紀子)

楽天大学仲山学長が解説「聞く技術とは、話しやすい場をつくる技術」2021年11月に開催された聞く技術フェスティバル2021
楽天大学仲山学長が解説「聞く技術とは、話しやすい場をつくる技術」楽天大学の仲山進也学長(左)と宮本恵理子さん(右)

宮本恵理子さん(以下、宮本) 仲山さん、今日も書斎からのご参加ですね。相変わらず、本棚にはたくさんの人形やオブジェが飾られています。

仲山進也さん(以下、仲山) 早速、触れていただいてありがとうございます(笑)。この本棚のこと、宮本さんの新刊『行列のできるインタビューアーの聞く技術(以下、聞く技術)』で取り上げていただいたんですよね。

宮本 『聞く技術』の中では、「オンラインの会議などで画面の背景に映り込むものには、その人の物語がある」「もし画面の目立つ位置にユニークなモノが置かれている時には、相手に質問してみよう」などと書かせていただきました。この時、象徴的な例として、仲山さんの本棚をご紹介しています。

仲山 今回、『聞く技術』をテーマにしたオンラインイベント「聞くフェス」にゲストとして呼んでいただいたわけですが、僕はさっき、家族から「生返事ばかりしていて話を聞いていない、聞く技術がまったくないのに大丈夫なのか」と言われてきたところなんですけど、大丈夫でしょうか(笑)。息子からは「生返事」というあだ名をつけられました。

 先日も、僕以外の家族が旅行に行くと言って、ディズニーランドに出かけたんです。それが、帰ってきたら伊豆に行ってきたという。どうやら僕は「伊豆に行ってくる」という会話を、「ディズニー行ってくる」と聞き間違えていたようです。「ほかにも会話の節々に伊豆の話題が出ていたはずなのに、何を聞いていたんだ」と呆れられました。

「聞く」より「話しやすい場をつくる技術」

宮本 そんな一面もあるんですね(笑)。仲山さんとは、ウェブメディア「Biz/Zine」の連載「トラリーマンに学ぶ働き方」でご一緒して以来のご縁です。仲山さんが聞き手となるインタビューに私が担当ライターとして関わり、その内容は2021年末に『「組織のネコ」という働き方』として書籍化もされました。仲山さんを見ていると、インタビューの最中にいろいろなことを思いついているように感じます。そんな時でも、仲山さんは相手の話をさえぎることなく、最後まで黙って聞いていらっしゃいますよね。

仲山 『聞く技術』の中で、宮本さんが「取材中に、ほとんど質問していないかもしれない」と明かすくだりがありますよね。僕もそうなんです。楽天出店者向けの媒体『楽天ドリーム』で、これまで多くの対談をしてきたんですが、その文字起こしを見ると、ほとんど何も質問していないんです。

 対談の最中、たまに「ふんふん」とか「といいますと?」「○○ということですよね」と言うくらいです。それをそのまま原稿にすると、話し手ばかり話していて読みづらいので、読みやすいように合いの手のコメントを書き加えることが多いです。

宮本 質問をしなくても、相手の話を抽象化して、短い言葉で返すだけで、話し手が「そう、そう」となって、さらに話していくわけですね。

仲山 ありがたいことに、勝手に相手が話してくれるんです。僕はこの「聞くフェス」を、これまで5日間、すべて拝見しました。ゲストのみなさんが「聞く」をテーマに語っているのを聞いて、「聞く技術」とは、「問う技術」ではなく、「話しやすい場をつくる技術」なんだと思いました。

 宮本さんの『聞く技術』でも、本の半分が、準備や環境作りについて書かれています。「年表を用意する」とか「真正面に向き合わないように椅子を少しずらす」とか「最初に質問内容を伝える」とか……。それは、初対面の人に話しやすい場をつくるということだと思うんです。

 僕の場合は、話しやすい場をつくるために、事前に僕のことを分かってもらう関係をつくってから、ゲストに来てもらうことにしています。だから、既に知っている人との対談が多くなります。そうすると、アイツ(仲山)にならあの話をしようとなって、質問をしなくてもどんどんしゃべってくれる。

宮本 仲山さんはSNSで様々な発信をしていますが、それを見ると、仲山さんがどんな人で、どんな考えを持っているか分かります。そして、この人とならこういう話をするとおもしろそう、というようなこともあらかじめ考えることができる。SNSで発信しておくことも、事前に分かってもらう関係つくりの一環であり、相手にどんどんしゃべってもらうための準備だと言えるかもしれないですね。(2022年1月28日公開記事に続く)