12月6日、建設業界関係者が注目していた裁判の判決が言い渡された。

 建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんなどを発症した建設現場の元作業員や遺族らが、国と建材メーカーを相手取って119億円の損害賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所はメーカーの責任こそ退けたものの、国の責任を認め、10億円ほどの賠償を命じた。

 これまで、工場の元作業員などが勝訴したことはあるが、建設現場の元作業員が勝訴したのはこれが初めて。現在進行中のほかの裁判にも影響すると見られている。

 1975年以降、次々と使用が制限されたり禁止されたりするまで、アスベストは建材として広く使われてきた。アスベストは中皮腫などのがんを引き起こすことが分かっており、大勢の死者を出している。

 そうしたアスベストが、東日本大震災の際、被災地でかなり広範にわたって飛散した可能性が高い。地震の揺れに加え、大津波によって建物が軒並み崩壊、がれきと化したからだ。 

 さらに、被災地の建設業者は「地方だけに古い建物が多く、解体作業が問題になっている」と明かす。

 アスベスト除去には、高度な技術や豊富な経験が必要。ところが、あまりに解体作業の需要が多く、そうしたノウハウを持つ専門業者が対応できていないのが現状だ。

 しかたがなく普通の解体業者や建設業者が対応しているのだが、夏場の暑さに負けてマスクを外して作業したり、知識不足からアスベストを飛散させてしまったりするケースが後を絶たないという。こうした作業員たちが数十年後、健康被害を訴える可能性が高まっているというわけだ。