絶頂トヨタの死角#13Photo:Bloomberg/gettyimages

歴史ある企業にとって「創業家と経営の在り方」は積年の課題である。創業家が経営幹部に就いてきたトヨタ自動車やパナソニックでも事あるごとに議論されてきたことだ。近年、トヨタでは創業家が経営への支配力を強めている。豊田家の持ち株比率はマイノリティー出資であるにもかかわらず、巨大組織を支配できるのはなぜなのか。特集『絶頂トヨタの死角』の#14では、支配構造の秘密に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

トヨタ奥田元会長が羨ましがった
パナソニック経営からの「創業家分離」

「松下電器産業(当時。現パナソニック)では、経営と創業家を分離することができた。創業家を粘り強く説得して(経営と)切り離せたのは尊敬に値することだ」

 かつて奥田碩・トヨタ自動車元会長は森下洋一・松下電器元会長をそう評価したという。

 早くから、奥田氏の脳裏にはトヨタの経営と創業家である豊田家を切り離す構想があったようだった。当時を知る関係者によれば、奥田氏の真意はこういうことだったらしい。

 豊田家に生を受けたからといって代々社長を受け継いでいくことが決まっているのはおかしい。このままトヨタが車造りをしていったとしても、いずれ自動車事業はトヨタが手掛ける全体の“ワンオブゼム”になる。ならば持ち株会社体制へ移行して、新しい事業に柔軟に取り組んでいけるように変えていくべきだ──。

 この「創業家分離」構想が、どのようなかたちで創業家である豊田家に伝わったのかは分からない。とにかく豊田家の虎の尾を踏んでしまったことだけは確かだった。

 次ページ以降では、近年、トヨタの経営への支配力を強める創業家の内実に迫った。豊田家の持ち株比率はわずか数パーセントであるにもかかわらず、巨大組織を支配することができるのはなぜなのか。その支配構造のカラクリを解き明かす。