2021年、上場企業が関わる取引金額100億円を超えるM&Aの件数Photo:PIXTA

2021年、上場企業が関わるM&Aはここ数年の低迷からの持ち直しが鮮明となり、取引金額100億円を超えるM&Aの件数は、2016年以来の高水準となった。海外案件の回復が寄与している。取引金額「1000億~1兆円未満」は昨年比で倍増し、20件に迫る。TOB(株式公開買い付け)は全体の3割を占める。(M&A Online編集部)

海外案件の回復が顕著

 取引金額が1兆円を超えるメガ級のM&Aは過去10年でも10件ほどに過ぎず、いわば別格。1000億円以上でも年間10〜20件前後と限られ、横綱クラスといえる。100億円以上であれば、大関・関脇の資格は申し分ない。

 2021年のM&A件数は877件で、2008年の870件を上回り、同年秋に起きたリーマンショック後の最多を記録した。このうち金額が100億円以上の取引は74件を数え、2020年の51件から大きく持ち直すとともに、2016年(87件)以来の高水準となった。

 その要因は海外案件の回復だ。100億円以上の海外案件をみると、2020年は31件だったのに対し、2021年は45件に達し、このうち25件が金額上位30に入っている。金額の張ることが多い海外案件だが、2020年は新型コロナの影響が広がる中、外国とのビジネス往来が行えず、商談が一時的にストップしたことなどから、大幅な落ち込みを余儀なくされた。

 2021年の全74件を金額帯でみると、100億~1000億円未満が55件(2020年は39件)、1000億~1兆円未満が18件(同9件)、1兆円以上が1件(同3件)。金額帯ごとに厚みを増していることが分かる。唯一の1兆円超えは日立製作所で、米国の新興IT企業であるグローバルロジックを約1兆400億円で傘下に収めた。