SNSが誕生した時期に思春期を迎え、SNSの隆盛とともに青春時代を過ごし、そして就職して大人になった、いわゆる「ゆとり世代」。彼らにとって、ネット上で誰かから常に見られている、常に評価されているということは「常識」である。それ故、この世代にとって、「承認欲求」というのは極めて厄介な大問題であるという。それは日本だけの現象ではない。海外でもやはり、フェイスブックやインスタグラムで飾った自分を表現することに明け暮れ、そのプレッシャーから病んでしまっている若者が増殖しているという。初の著書である『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)で承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた川代紗生さんもその一人だ。「承認欲求」とは果たして何なのか? この連載では現代社会に蠢く新たな病について考察した本書より、一部を特別に公開する。

ガールズバーで一年半働いて気づいた「痛客」の残念すぎる共通点Photo: Adobe Stock

失恋の辛さを忘れたい一心で、私はガールズバーで働くことにした

大学生の頃、ガールズバーで働いていた。1年半くらいだろうか、週に1回とか月に2回とかだったけど、案外続いていた。

はじめに断っておくと、私は話術で楽しませるような仕事に向いているタイプではない。もともと接客業がものすごく苦手だった。人見知りだし、根暗だし、オタク気質である。おまけに嘘がつけない性格なので、43歳顔の酔っ払いおじさんに「俺何歳に見える?」などと質問をされてもうまい返しができない。「あー、43歳なんだろうな……」と思いながら「え~35歳くらいですか?」「43歳!? わか~い、全然見えな~い」と言うときのわざとらしさたるやひどいもんである。正直な人間なのだ。思ってもいないのに持ち上げたり媚を売ったりするのがとにかく苦手なのである。

性格としては絶対にガールズバーなど向いていないのだが、それでも働くことに決めたのは、失恋がきっかけだった。大好きだった彼氏にふられて自暴自棄になり、ふらふらとあてもなくウィンドウショッピングをしていたら、今は亡き渋谷のフォーエバー21の前で声をかけられたのだ。普段ならきっと無視していたのだろうが、そのときはとにかく傷ついた心を癒やしたくて、もうどうにでもなれとほとんどヤケクソみたいな形で体験入店することにした。もしかしたら、自分を変えたかったのかもしれない。自信をなくしていたし、自分が今までやったことのないものに挑戦してみたら、新しい道が拓けるかもしれないと思った。

それに、興味があった。なぜ男性たちは、わざわざ高いお金を払って女の子と話をしたがるのか。世の中の男性が求めるものは、何なのか。それほどに面白いものが、ガールズバーやキャバクラに本当にあるのか、知りたかった。私が彼氏にふられた理由も、「こうしていればふられなかったかもしれない」の答えも、もしかしたら見つかるんじゃないかと思った。

声をかけてきたガールズバーのおにいさんは水商売をやっているとは思えないほどさわやかで、妙に信頼できるところがあった。真面目で一生懸命だったし、誠実だった。水商売によくあるような「めっちゃ稼げるよ~」「君ならナンバーワンになれるよ!」などといった胡散臭いこともあまり言わなかった。無理にノルマなどが課せられることもなかった。

そういうわけで、恋に疲れ果てていた私はとにかく失恋の辛さを忘れたい一心で、ガールズバーでしばらく働くことにした。人生経験になるでしょ、やってみて向いてなかったら辞めればいいや、くらいのつもりだった。