岸田文雄首相ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談後、取材に応じる岸田文雄首相(2月15日) Photo:JIJI

ロシアによるウクライナ侵攻危機に対し、日本は強い当事者意識を持たなくてはいけない。その対応次第で、中国による台湾侵攻を含めた「日本有事」が起きた際、国際社会の支援を得られるかどうかが決まるからだ。それにもかかわらず岸田外交はチグハグで、不安感を増長させる。(イトモス研究所所長 小倉健一)

岸田首相は「いざ」というとき
日本を守ることができる?

 緊張が高まるウクライナ情勢を巡り、日本の存在感が失われている。米国はロシアによるウクライナ侵攻の可能性を強く警告し、同盟国に欧米と歩調を合わせた対応を求めるが、岸田文雄政権が煮え切らない態度を見せているためだ。

 エネルギー価格の高騰や在留邦人保護などの課題に加えて、米国も懸念する台湾有事を見据えた対応に不安が残る。岸田首相は「いざ」というとき、日本を守ることはできるのか。

「ウクライナ国境周辺地域においては、ロシア軍増強などによって緊張が高まっており、余談を許さない状況が続いている。事態が急速に悪化する可能性が高まっている。政府として、こうした動きを重大な懸念を持って注視しており、高い警戒感を有している。日本としてはウクライナの主権および領土の一体性を一貫して支持しており、国際社会と連携し、適切に対応していく。政府として、在留邦人の安全確保を最大限取り組んでいく」

 松野博一官房長官は2月14日の記者会見でこのように発言。国家安全保障会議(NSC)の4閣僚会合で林芳正外相や岸信夫防衛相らとウクライナ情勢について協議し、関係省庁からの報告と情報共有を行ったことを明らかにした。

 11日時点での在留邦人は約150人。外務省は同日付でウクライナ全土の危険情報を最高の「レベル4(退避勧告)」に引き上げ、現地の日本大使館職員を国外退避させるなど機能縮小を進めた。

 だが、ロシアによるウクライナ侵攻を防ぐために欧米の首脳級が飛び回っていたタイミングで、日本の動きはあまりに遅かった。