過去の成功例が通用せず、優れた手法はすぐに真似される「正解がない時代」。真面目で優秀な人ほど正攻法から抜け出せず、悩みを抱えてしまいます。リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏は、「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語ります。「自分らしく」「優秀で」「別の」やり方を組み合わせた「別解」を生み出すことで、他人の「優等生案」を抜き去り、突き抜けた結果を実現することができるのです。本連載では、平尾氏の初の著書となる『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』に掲載されている「現代のビジネスパーソンが身につけるべき、起業家の5つの力」から抜粋。「不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代」に自分の頭で考えて成果を生む方法を紹介します。

「みんながやっている」ことを選んでいては、路頭に迷ってしまう理由Photo: Adobe Stock

正解にはもはや価値がない

ビジネスにおいて、絶対に成果が出る正解は、もはや幻想です。

これからは「誰もが思いつく実現可能な選択肢」を選んでいるだけでは、人が無価値になる時代がやって来ます。

その傾向は、情報化時代のさらなる進展、SNSなど個人のメディア化、ロボット化、AI化などによって、拍車がかかっていくはずです。

日本は、絶妙に守られている国です。

GDPはアメリカのように1位ではなく、中国に抜かれて長く守ってきた2位の座を明け渡したとはいえ、依然として世界第3位の座を守っています。

陸路で国境を接する国のない島国で、日本語という特殊な言語を使うことで他言語の侵入が抑えられてきました。気候も温暖で、台風や地震が多いとしても住環境としてはかなり良好な部類に入ると思います。

経済的にも強く、安全面や住環境に優れているので、高度成長を達成してからは、日本人はがむしゃらに頑張らなくてもある程度の生活を手に入れることができました。

ところが、アジアの国々から日本で一旗揚げたいとやってくる人が増えています。グローバル企業はさまざまな取引手法によって日本市場を手に入れ始めています。今後はさらにグローバル企業との競争も激しくなり、人間だけではなくロボットやAIと戦わなければならなくなります。

そのとき、誰もが到達し得る正解を出しても競争に勝つことはできません。

誰もやらないような、より創造的な打ち手を繰り出さなければ、勝負にならなくなっていきます。これまでは正解で何とかなっていた人たちが、どうにもならなくなって路頭に迷う時代になるという仮説を私は持っています。

すでに、企業の世界はそういう戦いになっています。

同じことをやっていても、一瞬で競争に負けてしまいます。新しく何かを発明したとしても、追いつかれるスピード速すぎる。強い打ち手を強い方法でやると、最初は高い価値を出せますが、誰もが同じようなことを考えるので「それでいいんだ」「おれもそう考えていたよ」となって陳腐化が早まります。

とくにITの世界は、すぐに模倣されてコモディティ化(一般化)してしまいます。

継続してそのビジネスに取り組もうとしても、すぐに誰かが出てくる。

一瞬は正解で勝ったとしても、価値を維持できず、幻のようになくなってしまう。

一瞬のうちに、実像が虚像になってしまうから、正解は幻なのです。

(本原稿は、平尾丈著『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』から一部抜粋・改変したものです)