どんな時代でも生き残れる不動産投資家になるための極意とは何か? 不動産投資で利益をあげ続けるため、生き残れる投資家になるために必要なクリエイティングアルファ(新しい価値をつくる)という斬新な視点が学べると好評のハーバード式不動産投資術』(上田真路著、ダイヤモンド社)。不動産投資のクリエイティングアルファの秘訣を探る対談記事の第4回。対談ゲストは、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事の木下斉さん。地域再生事業家として、これまで数多くの地域活性化プロジェクトにかかわってきた木下さん。今回のテーマは、地方活性化や街づくりなどの際に、不動産投資の視点から考えられるプロ人材がいないという問題について。不動産投資を始めたいと思っている人、すでに始めている人、地域活性に不動産メカニズムをつかってかかわりたい人、さらに上を目指したい人必読。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

地域活性化プロジェクトなどで、圧倒的に欠けている不動産開発の視点とは?Photo: Adobe Stock

商店街の人たちは、街の変化を動的に見る力が弱すぎる

木下斉(以下、木下) 商店街がおかしくなって機能しなくなって、たとえば街の商業施設から撤退してしまった百貨店をもう一回誘致しようとしたりするわけですよ。今の時代の消費者の行動のなかで、自分たちの街でどういう価値を作れるのかという方向に、あまり頭が働かないんですよね。

上田真路(以下、上田) 不思議ですね。木下さんの携わられた地方の不動産活用で、消費行動の変遷に合わせて用途誘致した事例はありますか?

木下 私たちが七年ほど前に愛知でスタートしたプロジェクトの場合、ファミリー層が多くて赤ちゃんがすごい多かったんですね。だから赤ちゃん連れで行けるカフェを施設内に誘致して入ってもらいました。また別の中部圏の案件では、その地区の教育支出がすごい伸びているというのが見えたのですが、そのニーズを受け止める業態が商店街にはなかったんです。それでダンスをしながらやる英会話教室とか塾とか、そういう業態に入ってもらいました。周辺の居住者にかんするデータベースとかで調べると、そういう支出傾向とかがわかるじゃないですか。

上田 そうですね。

木下 本来、商店街は商工会議所とかと契約しているわけだから、そうしたデータベースも使えるはずなのに、街づくりに全然使っていないんですよね。

 その地区で一昨年に二〇〇坪くらいのスーパーが撤退したんですけど、またスーパーを連れてこいみたいなことを言ってるから、どうせ連れてきても、また一、二年で撤退しますからやめましょうという話をしました。スーパー業界は超熾烈な争いなんで、まわりにもっとでかいショッピングセンターがどんどん出きているんです。駅前の二〇〇坪ぐらいの中途半端なスーパーなんて、買い忘れたものを多少買うぐらいで、メインには絶対なり得ないので、ビジネスとして成立しない。

上田 それに加えてモダン・ディスラプター、この場合は街の小売店舗を焼き尽くしてしまうAmazon Freshやフード・デリバリーが台頭してきたため、旧来のハコを別の用途で埋めなくてはいけない。この別のものを、時代や生活者への観察の目をもって見極めていかないと全滅ですよね。

木下 そうですね。さっき言ったファミリー層で小学生とかが多くなってきたから、親もみんな時間に余裕が出てくるので、ジムとかを入れた複合施設に切り替えたほうがいいと。それに加えて、マンションもちょうど建ててから一五年、二〇年ぐらい経ってくるから、内装とかも含めて改修もするわけでリフォーム業者のニーズが出てくるからというので入ってもらいました。

上田 なるほど。

木下 やっぱり街の変化のステージにあわせて、ちゃんと業態を入れ替えていけば、できることはたくさんあるはずなんですよね。五〇年前に百貨店が来たからって、未だに百貨店じゃなきゃダメだとかって言い張ってる人たちとかは、街の変化を動的に見る力があまりにも弱いですよね。