ロシア「力の強制」が生む最悪のシナリオ、犯罪心理学から読み解く真の思惑とはPhoto:Sean Gallup/gettyimages

依然、緊張状態が続くロシアによるウクライナへの軍事侵攻。優勢に見えるロシアの動向だが、実は待っているのは泥沼のシナリオだった!外事警察出身の著者が独自の視点で読み解くロシアの真のねらいとは?(オオコシ セキュリティ コンサルタンツ シニアコンサルタント 松丸俊彦)

「自己都合」で動くロシア
アメリカの次の一手は?

「ロシアの対外政策の最優先事項はロシアだ。それも、国の安全保障という伝統的な意味に限らず…(中略)…強固な基盤を確立するという意味で自国が最優先だ」

 米クリントン政権で国務副長官としてロシア政策を担当したストローブ・タルボットらは、ロシアの行動原理について2006年にこう述べています。ロシアの強固な基盤を確立する、そのために周辺国の都合はあまり考えない、というわけです。

 この見方は現在にも、よく当てはまるでしょう。ウクライナの都合よりも、自国が強固な基盤を確立するほうが優先なのです。NATOの加盟はウクライナの意思によるものですが、そんなことはロシアにとって「どうでもよい」のです。

 ウクライナもNATO加盟国も、ロシアの都合が最優先する。今回のウクライナ侵攻は、こうしたロシアの自己都合優先の結果です。

 アメリカは短期的に、ロシアの動きをどう封じていくのか。バイデン大統領の本気度によると考えます。

 ロシアは力の論理に敏感であり、「(敵の)勢力が強すぎると考えられた場合に個々の外交戦線の面で比較的容易に譲歩する」と述べたのは、1940年代にアメリカの冷戦政策を築いたジョージ・ケナンですが、これは現在でも同じです。

 2014年のクリミア併合の際にオバマが取ったような腰砕けの対応を、バイデン政権でも繰り返すとしたら、ロシアはウクライナの全域まで兵力を進め、かいらい政権を樹立するでしょう。キエフ近郊まで地上兵力を進めた現状では、その可能性はきわめて高くなりました。つまり、アメリカは決然たる対応に失敗しています。

 それでは、ロシアはどこまで突き進んでいくのか。アメリカに止める手だてはあるのでしょうか。