3月1日に東芝社長兼CEOに就任した島田太郎氏(右)と前任の綱川智氏3月1日に東芝社長兼CEOに就任した島田太郎氏(右)と前任の綱川智氏。島田氏はバンドでドラムをたたくなど趣味人でもある 写真提供:東芝

会社を2社に分割にする案に大株主が反対し、混乱に陥っている東芝で社長兼CEOが交代した。前任の綱川智氏(66歳)は自らが推進してきた「分割計画」の実現が見通せない中での退任となり、唐突感が否めない。新任の島田太郎氏(55歳)はビジネスセンスを評価されてスピード出世を果たしたものの、株主対応やマネジメント力は未知数だ。東芝の難局は簡単には終わりそうにない。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

綱川氏の社内求心力が低下
きっかけはビル3事業の売却方針

 難局を打開するための体制の刷新だが、荒れた海に小舟をこぎ出すような不安感が拭えない。

 東芝は、本体から半導体などの事業を分離し上場させる「2社分割計画」に一部の大株主が反対するなど経営が混乱している。背景にあるのは経営陣と物言う株主(アクティビスト)との対立だ。

 アクティビストと常に対話しながらの経営が求められる東芝トップの世代交代は候補者が見つからず難航していた。社外の人材も含めて指名委員会が後継者を探していたのだが、火中の栗を拾う優秀な外部人材を見いだすことはできなかったようだ。

 そして、ようやく綱川智社長兼CEO(最高経営責任者)の後継者が発表されたのは、同氏が自ら最善策として提案した会社2社分割案の是非を問う3月24日の臨時株主総会の目前という“微妙”なタイミングだった。

 東芝は、綱川氏は引責辞任ではないと強調したが、同氏に経営の混乱を招いた責任があることと、混乱収拾のために体制を刷新する必要があったことは間違いない。

 綱川氏自身もアクティビスト対応に疲労困憊(こんぱい)だったようだ。綱川氏は派手なパフォーマンスを好まない地味な経営者だが、社員の働きがいを重視する姿勢が評価され、社内では人望があった。

 その求心力が弱まる発端となったのが、2月7日の方針転換である。会社分割を「3社体制」から「2社体制」に見直すとともに、ビル3事業(エレベーター、空調、照明)を売却する方針を打ち出したのだ。