DX狂騒曲#4Photo:PIXTA

戦略系コンサルティング企業のトップである米ボストン コンサルティング グループ(BCG)。2020年に行った世界と日本でDXに取り組む企業を対象にした調査では、日本企業の14%しかDXに成功していないという結果が出た。特集『企業・ITベンダー・コンサル…DX狂騒曲 天国と地獄』(全14回)の#4では、調査を担当し、日本地域でのデジタル事業を統括するBCGマネージング・ディレクター & パートナーのロマン・ド・ロービエ氏に、調査結果の詳細と、成功するためのDXのポイントを聞いた。また他のコンサルに比べてBCGの強みも明かしてもらった。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

DXを成功させるのに必須な6ポイント
日本企業はアジャイルとITシステムで弱み

――2020年に米ボストン コンサルティング グループ(BCG)が行った調査で、DX(デジタルトランスフォーメーション)に成功したと回答した日本企業が全体のわずか14%であったことを明らかにしましたね。

 世界各国の平均は30%で、日本企業はこの水準より低かったのは確かです。この調査でDXに成功した企業の要因を調べたところ、以下の六つの要素を全て持っていることが分かりました。まず、事業上の明確な目標と結び付いたDXの全体的な戦略。そしてCEO(最高経営責任者)から中間管理職に至るまでのリーダーのコミットメント。DXに最高レベルの人材を投入すること。アジャイルな考え方をベースにしたガバナンス。成果達成に向けた進捗状況の効果的なモニタリング。最後に、柔軟なIT基盤とデータのプラットフォームです。DXを成功させるには、この6要素、少なくとも5要素を満たしていることが必要です。

ロマン・ド・ロービエ写真提供:BCG

――DX成功を阻害する、日本企業に特有の要因はあるでしょうか。

 まず一つに、日本企業はアジャイルに弱い。縦割りを超えて部門間連携などを柔軟に行うことがDXでは必要ですが、これは日本企業の伝統的な組織となかなか合致しないものです。人材の流動性も低く、一企業の中でキャリアを積むことを評価する人事制度を、多くの会社が採用しています。IT専門人材を中途採用する流れは一部企業で始まっていますが、評価体系・人材の募集体系などを同時に変える必要があります。

 また、DXを成功させるために必要なITシステムについても課題があります。海外企業ではERPやサプライチェーンマネジメントシステムなどで業界のベストプラクティスを標準システムとし、それをそのまま使用します。一方日本は、自らの業務の独自性を保つためにSIerに依存して、オリジナルの業務システムを作り上げてきた。そのため、システム部門の人たちの権限が弱く、システム仕様がブラックボックスのまま、その構築が外部にアウトソースされるということが過去何十年も続いてきました。

 DXの前に会社のガバナンス、人のマネジメント、情報システムの構築についてのレベルが高くない企業が多いということです。ここを解消しないでDXを進めようというのは、走り込みなどのトレーニングをせず基礎体力が付いていないのにオリンピックに出場しようとするようなものです。

――解決策はありますか?また、DX成功には、どのようなITベンダーやコンサルと付き合えばいいのでしょうか。下流のシステム構築や運用まで全て手掛けるコンサルも増えています。BCGがDX事業において競合他社と差別化している点についても教えてください。